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「無理矢理ちぢめて良いわけない」40年以上の観察でわかった“骨盤矯正”の意外な落とし穴

『女と骨盤』より #1

2021/01/04

source : 文春文庫

genre : ライフ, ヘルス, 読書

note

 一時的でいいなら、ウエストまわりを数センチ細くするのはけっこう簡単です。しかし、多くの場合はじきに戻る。骨盤はちぢんだりゆるんだりできる状態であることが大事で、ちぢみっぱなしがいいのではありません。

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 骨盤をベルトで締め付けてちぢめるという発想に感心しないのは、骨盤の「ゆるむ自由」を奪うからです。ゆるむこと、リラックスして身体を休めることはだれにでも必要なことです。ダイエット目的で骨盤の動きに他人が介入できるほど、骨盤の自律的なリズムはヤワではない! とも言えます。

「整体を受ける」といっても、身体はただ受け身ではない

 いわゆる「骨盤矯正」とは、広がった状態の骨盤をとにかく「矯正」してちぢめることを目的としているところが多いようです(たぶん)。骨盤が広がるのも、左右差があるのも、とにかく悪いことと誤解しているのではないでしょうか。

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「整体」として一般的に信じられているのは、「骨盤のゆがみを正してスタンダードな状態にする」ことですが、施術後に起きる身体の反応まで含めてみれば、実際にはそのまま「ゆがみのない身体」に固定したままになるということはまずありません。「ゆがみを正す」施術をした後で、受けた身体がそれに反応していろいろ動き、結果としていい状態になることがある。いわゆる「骨盤矯正」を受けた身体に起きるのは、大体そういうことだと思うのです。

 そもそも骨盤の動きが固まっていて、ゆるんだりちぢんだりしながら骨盤のバランスを組み替える動きが機能していない状態になっている身体ならば、「矯正」というショックで、骨盤が自発的に動き始めるきっかけとなる可能性もあると言えます。

 ここでひとつ気がかりなのは、たとえば生理で骨盤がゆるもうとしているときに、無理矢理ちぢめるのが良いわけがないということ。大きなショックを受けたときと同じで、生理が止まるかもしれない。生理のときは、整体をしないという術者もいます。