京都・蓮久寺の三木大雲住職のもとには、助けを求める人が絶えない。ポルターガイストに悩まされている、人形をお祓いしてほしい、さまよう霊を供養成仏させてほしい……。そんな実話や自身の体験など、現代の怪談、奇譚の数々を収めた続々・怪談和尚の京都怪奇譚(文春文庫)より、背筋も凍る「里帰り」を特別公開。見えない世界に触れることで、あなたの人生も変わる……のかもしれない。

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 私はありがたいことに、全国各地から講演で呼んでいただく事があります。

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 その日は、東京の講演で、200名程の方々にお越しいただいておりました。講演が終わりますと、お帰りの皆様にお礼を伝えるため、出口近くで挨拶をしておりました。 

 その時、1人の男性が近づいてこられ、こう声をかけてこられたのです。

「俺のこと覚えている?」 

 一瞬、戸惑いましたが、すぐに見当がつきました。 

「もしかして、金田くん?」

 そう返事をすると、彼は嬉しそうに、よく覚えてくれていたと喜んでくれました。

 金田君は、私の高校時代の友人で、卒業以来となる久しぶりの再会でした。彼は私が東京で講演することを知って、わざわざ訪ねて来てくれたのです。

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久しぶりの里帰り

 東京での講演は2日連続だったため、この日は東京に1泊することになっておりました。ですので、私たちは、一緒に食事に出かける事にしました。 

 久しぶりに会った私たちは、高校時代の思い出話に華を咲かせました。彼は野球の推薦で入学した為、野球部の寮から通学していました。実家は京都の郊外にあり、あまり京都市内に詳しくありませんでしたので、野球部の休みの時には、私が市内を案内することがよくありました。そして、高校3年の夏の終わりには、彼の実家で遊んだこともありました。

 そんな昔の思い出話をひとしきりした後、自然と卒業してからの話へうつっていきました。

 金田君は高校卒業後、大学には進学せずに、自動車関連の仕事に就いたそうです。高校時代から車好きだった彼には、今でも最適の職場環境だといいます。

 その後結婚した彼は、1人のお子さんをもうけて、住まいを東京の秋葉原に移し、マンションを買って、3人で住んでいるとのことです。 

「京都には帰っていないの?」

 私の問いかけに彼は、2年程前に会社が突然、3日間の臨時休暇をくれたので、久しぶりに里帰りしたよと、その時のことを話してくれました。