無人駅からバスに乗り込み……
彼の実家は、京都北部の田舎町で、ご両親は農家をされていました。
京都市内から電車で数時間行くと、○○駅に着きます。この駅は無人駅で、高校時代に見た駅そのままの姿を残していたそうです。
そこからは、バスで実家に向かうのですが、実家の近くのバス停まで、また小一時間かかるのだそうです。しかし彼は、久しぶりの風景にあっという間に目的のバス停に着いたそうです。
バスから降り立った彼は、感動に涙が出たといいます。もちろん懐かしさもあったそうですが、それ以上に、都会とは違って、木も畑も川の流れる音までもが昔のままだったことに感動を覚えたのだそうです。
バス停から実家まで、美しい田園風景と、心地よく吹き抜ける風、野に咲く花々の香りを楽しみながらゆっくりと歩いて実家の玄関に着きました。
実は彼は、実家のご両親に、帰郷する事を内緒にしていたので、どんな反応をするかも楽しみにしていたと言います。
「今日はもう帰りなさい」
玄関の扉を開けて大きな声で「ただいま」と言うと、奥から懐かしい声で「はーい」と言いながら母親が出て来て「まあー」と驚いたそうです。
その声に驚いて、父親も出て来て、すごく驚いていたと楽しそうに話をしてくれました。
その日の夜、親戚の叔父さんや、近所の人達も交えて、夜遅くまで賑やかに楽しく過ごしたそうです。
夜も更けて来たのでそろそろお開きにしようと、彼は昔使っていた2階の部屋に行くと、高校生の頃に使っていたベッドがそのまま置いてあったのだそうです。
朝になり1階に降りると、両親に
「昨日は楽しかったね。今日はもう帰りなさい。奥さんや子供が心配するでしょ」
と言われたそうです。
考えてみると、3日間の休みを自分だけリフレッシュするのも気が引けると考えた彼は、帰ることに決めました。