同じ棋力なら学年が下のほうをメンバーに
いつも14人のメンバーに入るのは「レギュラー」でこれがだいたい10人近くいる。天野倉さんは入学間もない学生名人戦で勝ち進んだ時、先輩に「ここで優勝すると、4年間マジででかいぞ」と言われた。全国大会個人戦優勝のような抜群の実績があれば、だいたいはずっとレギュラーでいられる。藤岡さん、伊藤さん、天野倉さんは3人とも、1年生の春からずっとレギュラーだ。東大将棋部では、同じ棋力ならば学年が下のほうを団体戦メンバーに入れる。
「そのほうが経験値が上がって長く活躍してもらえるからです」(伊藤さん)
「1年生を王座戦のメンバーに入れたら、頑張るようになって将棋倶楽部24のレーティングが200上がったことがあります。オーダーは主将が決めますが、みんなで相談もします。そのとき、学年が上の人は自分が出たいという気持ちはしまって、どの14人なら、どの7人なら一番団体戦で勝てるかを考えられるのが東大の強みです」(藤岡さん)
「関東の大学の個人戦で何位以上」といった成績をクリアすれば14人のメンバーに入れるという明確な基準も代ごとに示す。選考のための総当たりリーグ戦も行い、そこで上位に入ればメンバー入りできる。適度な競争で切磋琢磨していく仕組みを作っている。
エースは14人のうちの真ん中に
14人をどう並べるかも難しい。20年前は強い順から並べることが多かった。対局する7人のうち、大将として出る者はチームのエースという考え方が主流だったからだ。しかし、十数年前から、エースは14人のうちの真ん中に置くという考え方に変わってきた。
昨年の王座戦の東大のオーダー表を見ると、エースの伊藤さんが7番で、対局ごとに三将、四将、五将で出ている。
「エースを1番に置いてしまうと、大将でしか出られなくなってしまいます。真ん中に置くと、前のほうにも後ろのほうにも出すことができて、エースを相手校の誰に当てるのかという組み合わせのバリエーションを広くすることができるんです。戦略的には、こちらのほうが絶対にいい。どこの大学も同じように考えていると思います」(伊藤さん)
振り駒は大将が行い、大将が先手なら、副将は後手とチームの先手と後手は互い違いになる。14人のオーダー表は、王座戦なら当日朝に提出する。各大学のオーダー表が並ぶと、一斉にスマホで撮影。誰に誰を当てれば一番勝ち星を稼げるか、相手の出方を読み、次の対局に誰を出すか考える。細かく、誰と誰が当たるのかを何パターンか読みながら決めていく。判断するのに必要になるのがデータだ。
「対居飛車は強いけれど、振り飛車には弱いという部員もいます。誰でも相手の戦法によって得意不得意はある。普段から他大学の個々の得意戦法、苦手な戦法は把握しておき、こちらが勝てそうな組み合わせとなるように7人を決めるわけです」(藤岡さん)