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NiziUに韓国K-POPファンが抱く“2つの複雑な感情”〈韓国人評論家が寄稿〉

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「操り人形」と批判されてきた韓国のアイドル

 このように「楽しさを与える」という役割に徹してきた日本のアイドルと違い、韓国のアイドルはこれまで常に国民から厳しい「検証」の対象となっていた。アイドルの音楽性などの実力を、大衆から認められるために闘ってきた歴史だった。

 かつて、1987年に結成された韓国初の男性アイドルグループと言われるソバンチャ、ヤチャなど、日本のジャニーズ流を踏襲したアイドルも存在したが、その命脈は80年代後半にすでに途切れた状態。

ソバンチャは、ダウンタウンが「オジャパメン」という曲でカバーしたことでも話題に

 K-POPに連なる第1世代アイドルが現れるきっかけとなったのは、1992年のアメリカの男性5人組バンド、ニュー・キッズ・オン・ザ・ブロックの来韓公演と、同年にデビューした韓国の3人組男性グループ、ソテジワアイドゥルの登場だった。

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 この2つの“事件”で10代の音楽マーケットの可能性に気付いたSMのイ・スマン代表は、徹底した市場調査とキャスティングによって、5人組のボーイズバンド、H.O.T.を誕生させた。

H.O.T.のベストアルバム

 H.O.T.が10代の圧倒的な支持を集めたのは当然の流れだったが、注目すべき点は一般大衆からの批判が激しかったことだ。

 企画会社の操り人形のように、誰かが作ってくれた歌を金魚のように口をパクパクさせて真似する主体性のない人たち……という批判が、ファン以外の大衆が抱いた思いだった。 

 というのも、日本では、エンターテイナーとしての価値も歌手のアイデンティティの一つと考えられていたが、韓国では「エンターテイナー」と「歌手」を徹底的に分ける雰囲気が強かった。つまり、「ショービジネスだけの存在なら、H.O.Tには社会的、文化的な意味はない」と判断されたのだ。さらに、H.O.T.は「誰かが作ってくれたもの」ばかりで、「本人たちのもの」がないという声もあった。

 さらに、学業に励むべき10代の青少年たちの芸能界デビューも批判の的となった。当時、ある放送局は高校生歌手の出演禁止を論議したほどだった。

 このような背景から、H.O.T.だけでなく、S.E.S.やジェックスキス、ピンクルなど、K-POPの原点とも言うべきアイドルは中身のない殻のようなコンテンツと思われてきた。

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