2020年の国内で販売される清涼飲料で、最も成功したのは緑茶飲料の「伊右衛門」(サントリー食品インターナショナル)と言われる。それは、同年4月に行った「伊右衛門」本体の大型リニューアル以降、緑茶本体の販売数量が前年比約3割増と大幅に伸長したためだ(4~11月累計実績〈本体〉)。

今年大躍進を遂げた「伊右衛門」。大ヒットのカギは…

 同ブランドは、前年の2019年には売り上げが約1割減少し、コンビニエンスストアの売り場の棚から消える寸前の状況だった。なぜ窮地から反転攻勢できたのか。そのカギは、“瞬間的にわかる価値”と“過去の失敗の活用”にある。

飲料各社がしのぎを削る「緑茶飲料」市場

「伊右衛門」は、2004年の発売直後から竹筒型のボトルや本格的な味わいで一世を風靡し、その後は定番化して2019年には累計販売本数100億本を達成したメジャーブランドだ。

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 しかし、緑茶飲料は清涼飲料市場の中でも販売構成比が大きく、飲料各社がしのぎを削る競争の激しいカテゴリーで、販売数量トップの「お~いお茶」(伊藤園)や急成長を遂げてきた「綾鷹」(コカ・コーラシステム)などライバルが多い。その中で「伊右衛門」は、ここ数年減少傾向が続き、4位の「生茶」(キリンビバレッジ)から追い上げられていた。

ブランド別の販売数量ランキングは1位お~いお茶、2位綾鷹、3位伊右衛門、4位生茶。伊右衛門は追い上げられていた

勝負に出た「伊右衛門」 最大の挑戦は「色」

 そこで、「伊右衛門」は勝負に出る。2020年4月にブランド誕生以来、最大のチャレンジとなる大型リニューアルを行ったのだ。中味は一番茶をこれまでより高い比率で使用し、焙煎技術と抽出方法を研究して、淹れたてのような豊かな香りや旨み、雑味のない穏やかな渋みを両立したおいしさを目指した。

 そして、最大の挑戦は、独自技術により緑茶本来の鮮やかな“緑”の液色を実現したことだ。

 突然だが、「緑茶」をイメージして欲しいといわれて、何色のお茶を思い浮かべるだろうか。文字通り、多くの人は鮮やかな「緑」だろう。ところが、「ペットボトルの緑茶」を思い出して欲しい。そう、その多くはカテキンなどを含むお茶の持つ性質により、「緑」色とはなかなか感じられないのである。

 この常識をひっくり返す挑戦が、鮮やかな“緑”色の液色だ。同社担当者は、「売り場で見て、瞬間的にわかる価値は何かを追い求めた」とする。

 ここ数年の「伊右衛門」の主な購入者は、購入回数が月に1本程度のライト層が多かった。月1本、フラッと立ち寄ったコンビニで、ぱっと手に取ってレジに並ぶという消費者が、主な購買層だったのである。

ヒントは「月に1本、フラッと立ち寄った店でぱっととる」というメイン購買層にあった

 そうした消費行動には、ブランドの想いやストーリーを伝えることよりも、色味の鮮やかさといった目にとまってつい手を伸ばしたくなる要素が重要になる。そうした売り場で“ぱっと見てわかる”価値を追求し、より多くの人たちに関心を持ってもらうことを目指したという。