以下、彼の言葉の要約である。
靴を脱いで「料亭」に上がり、おねえさんに案内されて階段を上がって2階の部屋へ。
6畳~8畳くらいの和室。女性が白い襦袢に着替えて……
部屋は6畳~8畳くらいの和室。雨戸が閉まっていて、午前中なのに薄暗い。敷き布団の上にミッキーマウスの絵柄のバスタオルが置いてあった。掛け布団はなく、ほかに室内にあったのは、ちゃぶ台と座布団2枚だけ。
「ちょっと待っといてくださいね」
と、おねえさんはいったん退室したが、すぐにお茶と煎餅を持って部屋に戻って来た。黄色いドレスから白い襦袢に着替えていた。さすがプロ、着替えるのが早いなぁと妙なことに感心する。
「20分か30分か、どちらにします?」
とおねえさん。とっさに「20分」と答える。先輩から「20分、1万5000円」(当時)と予め聞いていたからだ。じゃあ、とおねえさんがすぐに目覚まし時計を20分後にセットしたのにはちょっと驚いた。
「よく来られるんですか」
「いえ、初めてです」
「大阪の人ですか」
「そうです」
「今日、お仕事は?」
「ええまあ」
聞き上手だなぁと思った。緊張を少しずつほぐしてくれる。広島か九州か、語尾に訛りを感じたが、出身を聞くのはタブーと思ってやめた。自分より少し上っぽい年齢も聞きたいが、印象を悪くしたくないのでこれも口をつぐむ。こちらからも何か話しかけなければ。
「勤めて、もう長いんですか」
「いえ、知り合いの紹介で来て、半年くらいです」
ぷつんと話が途切れる。沈黙。
「じゃあ、時間がないから始めましょうか」
おねえさんは、にっこりとそう言って、やおら襦袢の前をはだけにかかる。
あ、自分も脱がなければ。
「あの~、全部脱いでいいんですか」
と、へんてこな質問に、おねえさんは、
「はい、どうぞ」
このあたりからは、さすがにこの人も話しづらそうな雰囲気になってきた。その後の行為とは、つまりそういうことだ。