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しずる村上純が考えるコロナ以降の“幸せな芸人の働き方” 「たった一人に深く刺されば意味がある」「テレビにだけ頼るのをやめた」

2021/01/15

source : 文藝春秋 digital

genre : エンタメ, 芸能, 娯楽, 社会, 読書

note

——「売れてる」「売れてない」はテレビに出ているかどうか、で決まるんですか?

村上 これまでは九分九厘そうだったと僕は思います。吉本って基本は大体みんな、(明石家)さんまさん、ダウンタウンさん、ナインティナインさんを目指して入ってくる人が多い印象なので。一番おもしろくてかっこいい立ち位置が、テレビの最前線に出て活躍するというのがまず一つにあって。実際、僕もそこを目指していた時期がありました。

 勿論そこに向かって一生懸命やったからこそ気づけたこともあるし、そのときに得た知名度は財産にもなってるんですけど、そこだけが目指す場所ではないというのが今の僕の考えです。

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©️文藝春秋

 それまで僕が「売れたい」に紐付けてた「お金がほしい」「モテたい」「おいしいものを食べたい」といった欲には天井がないじゃないですか。そこを追い求めると、ゴールのない道をひたすら走ることになると考えるようになりました。勿論、そこを走り続けられる凄い人もいるんですよ。でも、自分には合っていないと思って。

大事なものは身の回りにあった

——近年、行き過ぎた資本主義というか、規模が大きくなることだけが正義という考え方が間違っているのではないか、という指摘が出てきていますよね。村上さんのお話からそれを感じました。

村上 僕も完全に「そうじゃない」考え方になりましたね。これまでは、日本中の人に知られたかったし、日本中の人から出来るだけ好かれたいみたいに思ってました。でも、今は100%自信のあるサービスが、たった一人にでも深く刺されば仕事をしている意味があると思えるようになったんです。

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 大切なものの順序を考えたら、手前から順番になってるなと思って。自分が生きていけるようにするのが前提で、まずは息子と奥さんがあって。そして、親族、友達……みたいなイメージです。仕事も、一番自分を必要としてくれている仕事や、親しくしている人との仕事、自分がすごくやりたいと思う仕事、が大事だなと。

 やりたい仕事ができて、会いたい人に会えて、家族を養えてご飯を食べていけるなら、そんな幸せなことはないなって思うんです。まあ歳をとったのかもしれません(笑)。