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自己破産をしてもなお約550万円を返済

「私が働く職場の同僚4人にも、(ワールドで)布団のローンを組んでもらったり、信販会社に借りてもらったりしていて、総額が400万円くらいあったんですね。それは自己破産をしてから、私が少しずつ返済しました。あと、自行での私名義の借金の保証人になってもらった銀行の支店長に対しても、残債を折半するという話になり、150万円くらいを分割で返しました」

 つまり、自己破産をしたことによる信用情報の毀損等のペナルティに加え、約550万円もの返済を余儀なくされたということだ。

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「その後、カードを作ろうという気にはなりません。いまは(結婚して)苗字が変わったんですけど、夫にはそのことは一切話してないです。あの経験がすごいトラウマで、しばらくは男性恐怖症みたいになっていました」

忘れていたトラウマが蘇る経験

 借金を完済し、結婚を機に徐々に日常を取り戻していった絵里子さんだが、過去のトラウマをふたたび炙り出す出来事が起きた。それがこの取材の7カ月前に発覚した、松永と緒方の逮捕である。

「じつはその時期、私は出産を控えていて、3月11日の夜に陣痛が起きたから、病院に行ってたんですね。で、松永の名前が12日に初めてニュースで出たんです。それを耳にして、けっこう間隔が狭まってたのに、陣痛がなくなったんですよ。ほんとに止まっちゃって、それくらいショックを受けたんでしょうね。出産は数日後に無事終えましたけど、忘れていたトラウマが蘇る経験をしました」

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 最後に私が松永に対する現在の感情を尋ねたところ、絵里子さんは即答した。

「カネ返せって……。あの人に出会わなければ、あのときあんなに人生狂わなかったって思いますね」

 たしかに20代前半で多額の借金を負わされてしまったことは、途方に暮れる出来事だと想像に難くない。とはいえ、絵里子さんは豹変した松永による、直接的な暴力の被害を受けずにすんでいた。それ以降、数多の命が奪われていることを考えると、不幸中の幸いだったといえる。というのも、彼女の交際時期と重なる1992年の前半、松永が当時の妻に対して苛烈な暴力を振るっていたことが、後に判明しているのだ。