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 金策に焦る松永と緒方は、7月に入ると、次々と刑事事件を起こしている。7月1日には、以前に甘言を弄して近づき、借金の名義貸しを依頼していた小学校教諭の母親に対し、ワールドが同教諭にカネを貸していると偽って、その肩代わりという名目で現金352万円を騙し取る詐欺事件を起こす。

 続いて7月31日には、松永が緒方を伴って柳川市にある信用金庫を訪問。そこで支店長に対して、約束手形の支払い期限の延長を求めたが、応じてもらえなかったことから、翌8月1日の午前4時半頃まで居座って暴言を吐き続け、長机を叩き壊すという暴力行為等処罰に関する法律違反事件を起こしていた。

幼稚園勤務時代の緒方純子(1983年撮影)

 2002年の逮捕時にはすでに時効が成立していたが、松永と緒方のふたりは、小学校教諭の母親に対する事件については1995年7月に、信用金庫に対する事件では93年6月に、それぞれ福岡県警柳川署による指名手配を受けている。

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松永は最初はきれいな商売をしようとしていた

 そして8月のワールドの経営破綻へと続く。これまで、10月の柳川市からの遁走は、前述の指名手配を受けた2事件が原因とされてきたが、実際は異なったようだ。柳川市在住で当時のワールドの内情を知る人物・Z氏は、私の取材に語っている。

「松永の場合は、ワールドで最初はきれいな商売をしようとしよったけど、途中から詐欺会社になったやんね。その流れで、金融に手を伸ばしよったろうが。そこでは、カネを貸して払えんごとなった相手から土地ば奪って、宅地開発やらしよったと。

©️iStock.com

 当然、そういう仕事内容やから反社(反社会的勢力)とも繋がりが生まれとったけども、本人はヤクザのフロント企業とかではなかったね。どっちかといえば、地元で昔からカネ貸しばしよる連中と一緒に組んで、対等に仕事ばやりよったという印象がある。ただ、口ほどにはうまくいかんで、カネに詰まったとよ。金策に追い込まれたあいつは、地元のヤクザの上部団体から数千万円を引っ張ったとやけど、そのカネを貸した相手が飛んでしまったと。それでにっちもさっちもいかんくなったというんが、柳川から逃げ出した本当の理由やね。