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借金で100万円超の水晶玉を購入…霊能力者を騙る債務者家族に浴びせられた“耳を疑う”一言とは

『督促OL 修行日記』より #11

2021/02/07

source : 文春文庫

genre : エンタメ, 読書, 社会, 働き方

リボ払いで限度額いっぱいまで“使われた”カード

 詰めていた息を吐き出すように、彼女はゆっくりした口調でそう言った。

 ああやっぱり……。私は暗い気持ちになる。他人にカードを譲渡することや、他人にカードを使わせることは契約時に禁止されているし、たとえカードを使っているのが他人でも、支払いの義務は当然ながらカードを契約している本人に発生する。

 カードはリボルビング払いで限度額いっぱいまで使われていた。この金額はこれからこの女性が支払っていくことになるのだけれど、このうちのどれくらいが彼氏が使ってしまった分なのだろう……。

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 このように、契約者さまが誰かにカードを渡している場合、

「その金は俺が使ってんじゃない! ××って奴にカードを貸してるんだ! そっちに連絡してくれよ!」

 と言って支払いを拒まれることも多い。

 だからといって支払いの義務はカードの契約者にあるので、いくら支払いを拒否されても私たちは請求するしかないのだが、こういった方から回収をするのは本当に難しい。

 でも、支払いを拒めば契約者本人の信用情報が悪化する。言うなれば他人の作った借金のせいで、契約者本人が不利益を被る。なんともいたたまれない事態になる。

彼氏に湧き上がる怒り

「カードを他の人に渡されるのは契約違反になりますので、この場でお客さまのカードは止めさせていただきます。よろしいですか?」

©iStock.com

 私はちょっと身構えながらお客さまにそう伝えた。彼氏や旦那さまにカードを貸している女性はこういった時、カードが使えなくなったせいで相手に怒られるのを恐れて「それだけはやめて!」と頑なに拒否することが多い。

 しかし彼女は一瞬、電話の奥で押し黙った後、

「わかりました、止めてください」

 と、割とすんなりと了承してくれた。

(でも、こんなに若い女の子が、彼氏の作った借金を背負わなきゃいけないなんてヒドイよ……) 

 複雑な気持ちになりながら、私はカードの処理を行った。

 彼女がすぐに決断してくれたのは、もうカードが限度額いっぱいまで使われてしまったからなのか。それとも他にもカードを渡してあるからなのかもしれない。でも彼女はこれから彼氏の作った借金を払っていく。

(あなたの彼氏、あなたのカードでキャバクラに行ってるかもしれないんですよ? しかもキャバクラらしきお店に行った日と高級焼肉に行ってる日が同じって、これどう見ても同伴出勤ですよ!?)

 同じ女として、ふつふつと、見ず知らずの彼氏への怒りが湧いてくる。

 そういえば、お客さまの中には若い女性と逃げてしまった旦那が残した借金を、任意で何年もかけて返済している女性がいた。「ご本人さま以外にはお支払いの義務はないんですよ?」と何度も言っても「私の責任ですから、必ずお支払いします」と毎月少しずつ返済をして、とうとう完済してしまった。

 また、息子さんが作ってしまった借金を肩代わりするお母さんも多い。女性と借金というのはどうしてこうもやりきれないのだろう。