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借金で100万円超の水晶玉を購入…霊能力者を騙る債務者家族に浴びせられた“耳を疑う”一言とは

『督促OL 修行日記』より #11

2021/02/07

source : 文春文庫

genre : エンタメ, 読書, 社会, 働き方

note

心根の優しい人たち

 督促の仕事をしていると、時おり、こんな心根の優しそうなお客さまと巡り合う。こちらのお願いにも本当に素直に答えてくださり、決して言葉を荒げたりしない。私たちは、ほとんどのお客さまには邪険に扱われるので、こういったお客さまはある意味、心の癒し的存在だった。

 ただお客さまがその優しさに付け込まれる形で買い物をして、カードの支払いができなくなってしまった時に、督促をしなければいけないのは、いつも以上に心が痛む。

 ところがある日、お客さまの心境に変化が訪れた。

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「もう、この健康食品やめようかなって思うんですよね」

「そうですか!」

 心の中でお客さまの決心に拍手。まぁ手数料収入で利益を得ている身としてはマイナスなのだけれど、そこは人として目をつぶる。

(あれ?)ところが次の月も、その次の月も健康食品代はカードの利用履歴に上がってくる。またもや嫌な予感しかしない。

「あの~お客さま、前話した時に健康食品やめるって言ってませんでしたっけ?」

 その月たまたま延滞が出て督促の電話をかけたので、私はお客さまに突っ込んでみた。

「あーなんか、年契約? みたいで、しばらくやめられないって言われちゃいまして」

©iStock.com

(お客さまぁぁぁぁ!!)

 それ、騙されてるって! もうひと押しして! もうひと押しすればやめられるから! いい人すぎるお客さまにどうか幸ありますように……。

督促OL 修行日記 (文春文庫)

榎本まみ

文藝春秋

2015年3月10日 発売

借金で100万円超の水晶玉を購入…霊能力者を騙る債務者家族に浴びせられた“耳を疑う”一言とは

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