「人見知りで話しベタで気弱」を自認する新卒女性が入社し、配属されたのは信販会社の督促部署! 誰からも望まれない電話をかけ続ける環境は日本一ストレスフルな職場といっても過言ではなかった。多重債務者や支払困難顧客たちの想像を絶する言動の数々とは一体どんなものだったのだろう。
現在もコールセンターで働く榎本まみ氏が著した『督促OL 修行日記』から一部を抜粋し、かつての激闘の日々を紹介する。(全2回の2回目/前編を読む)
◇◇◇
家出の責任を取らされる!?
私たち督促OLは、契約者さまの濃厚すぎる人間関係をかいま見るだけでなく、巻き込まれることもままある。
「なんとかして彼女を取り戻してください!!」
ある日、督促をしていた40代の男性から切羽詰まった声で電話がかかってきた。
「どうしてくれるんですか……、あなたたち、どう責任を取ってくれるんですか!?」
お客さまはなんだか今にも泣きだしそうな様子だった。
「ええと、……私どもが何かしました……か?」
突然の電話に、とりあえず慎重に聞き返す私。
「なんで女の人が電話したんだよぉ! アンタらのせいで、か、彼女が……出ていっちゃったじゃないかー!! 責任を取れー!!」
(ひー! なんか大変そうだよぉ!?)
これまでも書いてきたように、私たちはお客さまに督促の電話をする際、いきなり会社の名前を名乗ることはほとんどない。
それは、お客さまの多くが契約時に「配偶者などの家族に利用を知らせないでほしい」という希望を出すからだ。ただし、ショッピングでの利用の場合には、電話口に出たのがお客さまの「家族」であることが確認できた場合にのみ、会社名を伝え、折り返しのお電話をお願いすることができる場合もある。ただそれはあくまで家族と話ができた場合だ。
私が慌てていると、そのお客さま──Bさまは電話口でとつとつと語り始めた。
会社名を名乗れないことが仇となる
ショッピングでカードを利用した口座にたまたま残高がなく、私たちの会社から督促が来た。オペレーターはBさまの携帯電話に電話をかけたが連絡が取れず、入金がないまま数日が経過したため、今度は登録してあるBさまのご自宅に電話をかけることにした。すると電話口に出たのは、女性だった。相手が家族かどうかの確認がとれないので、まだ会社名は名乗れない。
「××(オペレーターの個人名)と申しますが、Bさまはいらっしゃいますか?」
「いえ、今いませんけど……」
「そうですか。それではまた改めて電話させていただきます」
最初の電話は、こんなやり取りで終わった。けれどなかなかお客さまに入金していただけず、何度か督促の電話が続いた。すると不審に思ったのか、相手の女性は突っ込んだ質問をしてきた。