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待望の『スプラトゥーン』新作情報…「文脈」と「タメ」を活かした任天堂の“巧み過ぎる発表術”とは

2021/02/24
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 視聴者は何が発表されているのかわからず食いつき、その後に『スプラトゥーン』シリーズのキャラクターであるイカが出てきて、詳しい人は新たな展開だとわかるのだが、タイトルはまだ出さず映像では別の情報を映していく。今回の場合、エッフェル塔のようなものが逆さになっていたりと、世界がどうも滅んでしまっているらしいとわかるのだ。

『スプラトゥーン』シリーズでは「フェス」というふたつの派閥に分かれて戦うお祭りが存在する。特に重要なのが作品の最後に行われる「ラストフェス」で、このフェスで行われたプレイヤーたちの選択が次回作に影響を与えるという慣例がある。『スプラトゥーン2』の場合は「どっちの世界を望む? 混沌 vs 秩序」というお題でラストフェスが実施され、混沌派が勝利していたのだ。

 よって、この情報を知っているプレイヤーは「自分たちの選択と結果が、この荒廃し混沌と化した世界に表れている」というライブ感も覚えられる仕組みになっており、しかも『スプラトゥーン2』の課題であったマンネリ感も解消されている可能性に気づく。そうしてひたすら緊張を高めたあと、ついに『スプラトゥーン3』というタイトルがドンと正式発表されるわけだ。

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『スプラトゥーン3』(2022年発売予定) 画像は任天堂 公式サイトより

 このほかにも初代『スプラトゥーン』の音楽をアレンジして使っているなどファンサービスも含まれている。つまり、ただおもしろそうな映像を見せるだけではなく、視聴者の心理を把握し、ゲームの文脈をきちんと活かした発表なのである。

特に対戦ゲームにおいては“盛り上がる発表”も重要

 どんなに優れたゲームでも目立たなければ売れないし、そもそも対戦ゲームはプレイ人口が多ければ多いほど魅力が出てくる(人がいなければそもそも対戦が成り立たないし、遊ぶ相手が少ないと自分と同じくらいの腕前の人と出会いづらくなる)。特に『スプラトゥーン』シリーズのようなゲームでは、より盛り上がるような発表も重要なわけだ。

『スプラトゥーン3』は現段階ではまだ発表されたばかりであり、発売も2022年とまだまだ先である。にも拘らずここまで盛り上がりを見せるのは、ゲームそのものが魅力を持ち、かつ発表が成功しているからだろう。筆者のように、2022年が待ち遠しく感じるようになった人も少なくないはずである。

待望の『スプラトゥーン』新作情報…「文脈」と「タメ」を活かした任天堂の“巧み過ぎる発表術”とは

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