事件が発覚して初めて知った松永の存在
私はその際に祥子さんは「緒方と一緒にいる」などと話していなかったか尋ねた。
「いや、そういう話はしちょらんね。いろんなことがわかったのは、亡くなって、今回のことが起こってからやから」
松永という男の存在についても、彼らの事件が発覚して初めて聞いたことだと話す。
「最後に50万円(実際は71万円)送ってから、10日くらいで亡くなったのかな。こっちはそれまでに、もっといっぱい送っとったとやけど、おカネがなくなっとるでしょ。(警察からは)『なんに遣ったかわからん』って言われたね。俺もバカやけん、送ってくれ言われたら、送りよったけん……」
末松さんはキャッシュカードを持っていないと説明する祥子さんに、別府市内にある郵便局留めで送金をしていたそうだ。祥子さんの死については事件性のない自殺として処理されており、彼女の所持金の出入りについて入念に調べられることはなかった。そのため、警察からは前述の返答を受けたのだろう。
消費者金融からも借金をしていた祥子さん
しかし、彼女は父親や前夫からの送金以外にも、カネの工面を行っていた。その一つが消費者金融での借金である。
「祥子が死んでからわかったことやけど、(消費者金融からの借金は)250万から300万近くやなかでしょうか。50万ずつとかで、何軒かに借りとりました」
ほかにも、自身が加入していた生命保険を解約しており、約200万円が彼女に支払われていたと説明する。
地名以外の具体的な居場所を明かさない祥子さんは、頼み事があるときにだけ、実家に電話をかけてきたそうだ。
「2、3日に1回のこともあれば、間が空くこともあり、平均したら1週間に1回くらいやったですかねえ」
その際に末松さんは、離婚の原因についても尋ねている。
「まあ、訳わからんこと言いよったね。おとなしか婿さんなのに、婿さんから暴力を振るわれたやらね。もう明らかに嘘ってわかることを言いよると。あと、家出から1、2カ月経ってから警察に捜索願を出したら、本人がそれを取り消したり……警察からね、『本人が取り消してくれち言いよるから、取り消した』っち連絡を受けたとですよ」
末松さんは、彼女の夫と一緒に、別府まで探しに行ったこともあるという。
「湯治客やら言うてたから、旅館を中心にね。鉄輪(かんなわ)ちゅうところがあるから、そこを婿さんと一緒に回りました。警察の話によると、そんときは別府やのうて(なくて)北九州におったらしかですね」