コピペ判決、裁判官の能力
民事の判決については、比較的長文だが官僚の作文的な傾向が強く、肝心の争点に関する詰めた記述が不十分である、また、認定された「事実」とそれについて判断を行う際の「メルクマールや法理」との有機的な結び付きに乏しいなどの問題がある(これに対し、基本判例法主義で経験論的なアメリカの判例は、事実と法理の有機的な結び付きを非常に重視しており、その点で説得力がある)。
しかし、近年問題視されているのは、そうした事柄以前の問題である。若手裁判官中心に「コピペ判決」の傾向が強まっているというのだ。
「コピペ判決」はおおよそ次のようにして作られる。
まず、当事者の主張をまとめる部分については、当事者に準備書面の電磁文書を提出させることができるとの規定(民事訴訟規則三条の二第一項)によりその主張をまとめた準備書面の電磁文書を出させれば、これを大筋引用することができる。
過去の類似判例をコピペして作成された書面
また、証拠により事実認定を行った後の法律論についても、過去の類似判例の法律家用データベースから該当部分をコピーアンドペーストして若干手を加えれば、簡単にできてしまう。
さらに、弁護士の中には、裁判官がコピペしやすいようなかたちで自分の側の主張や法律論をまとめた準備書面を提出する人も出てくる。
こうして作成されるのがコピペ判決であり、形式的には一応整っているが、その内容は裁判官が自分の頭でじっくり考えて全部を構成したものではないから、中身が薄く、また読みにくいものとなる。
私自身は当事者に準備書面の電磁文書を提出させたことは一度もなく、また、私の裁判官時代にはそれが一般的な傾向だったのではないかとも考える。したがって、コピペ判決の出現・横行は、ここ10年足らずの新しい出来事であろう。
ではなぜコピペ判決が横行するかといえば、それは、キャリアシステムにおける裁判官の基本的な能力、素養と関係があると思われる。
裁判官任官者については、一律に司法試験合格者中の成績上位者といわれることが多い。しかし、それは必ずしも正しくない。