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被災経験を生かしたのは地方だった

―― では、誰がコロナ禍への対応を動かしているのでしょうか。

御厨 今回象徴的なのは、国よりも都道府県が対応の主導権を持っていることです。「やりたくない」といっても現場の都道府県には否応なく対応が求められ、さらには自然災害と感染症とが重なって発生することもある。

御厨貴氏 ©文藝春秋

 たとえば、地震からの復興途上で2020年7月に豪雨災害にも遭った熊本県。自然災害の最中に感染症が広まると、危機対策本部は一緒に動くことになります。いいかえれば、災害復興もウイルス対応も同じ人間が実行することになる。

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 これは都道府県だから出来ること。国レベルでは国土交通省と厚生労働省が一緒に何かやりますなんてできません。都道府県は現場を抱えているうえ、各知事たちは直接選挙で選ばれて立場も権限も強いからできるのです。

 一挙に危機に対応しなければならない状況にあるからこそ、自然災害から避難しつつ、避難先で3密にならないように……と細かい配慮ができる。現場を持ってない国は空中戦にならざるをえませんから、必然的に都道府県や市町村が原動力になっていく。そう考えると、震災も感染症も現場がカギになっているといえるでしょう。

求められる素早い復興とそのカギ

―― 東日本大震災の前は阪神淡路大震災、近年は豪雨災害も……と、日本には危機が短い周期で訪れています。求められるスピーディーな復興には何が大切なのでしょうか。

阪神淡路大震災に見舞われた当時の兵庫県(1995年1月撮影) ©文藝春秋

御厨 まず、自然災害も含め、様々な危機とそこからの復興をどんどん類型化していくことです。津波が来たらA型、火災が起きたらB型、そこに感染症が起こるとC型……と、そのぐらいはもう今からでもできると思います。マニュアル大国と言われても、今後やってくるとされる南海トラフ地震や東京直下型地震にはそれで対抗するしかない。コロナ禍を長引かせているうちにやって来たら、文字通りこの国はつぶれるかもしれません。

 その上で、早く現場に予算を回せる体制を構築すること。災害も感染症も、最終的に事態解決の原動力になるのは「現場」の人たちです。彼らにきちんとまとまったお金が早く行き渡る仕組みを作る。素早く復興するためには物事を動かしていくことが求められています。

 日本はこれまでも多くの災害に見舞われてきましたが、そのたびに私たちは「まあしょうがないか」とぼやきながら乗り越えてきました。今後、危機が連鎖的に重なった中でもひとつひとつ素早く乗り越えていくために、次の10年、そうした準備が求められているのです。