ノルマを達成していれば自由に遊んでいても文句は言わない
1日のスケジュールは、毎日午前8時45分に朝礼、正午に昼礼、午後6時頃に夕礼、夜の午後11時15分に終礼の会議。15時間ほぼ休みなく働かせるというハードさだった。
「会議に出席するのは柱の50人だけ。月のノルマが3000万円なら、証券取引所の立会日が20日として10日で1500万円上げないと達成できない。売り上げグラフを作って達成度を毎日チェックさせ、すでにノルマを達成できた『柱』のグループは会議に出ることも出社する必要もなく、好きなようにしていいことにした。翌月分も含めた6000万円を達成していたら、翌月は海外で自由に遊んでいても文句は言わなかった」
ノルマ以上を売り上げた分は、すべてその「柱」のグループに与え、新しい事業会社を設立するもよし、好きに使わせた。そうして金を儲けることの楽しみを教えたという。
「でも、時々ふらっと職場をたずねて社員の仕事ぶりを見ていると、ほとんどが仕事の電話をしている振りをして実際は競馬レースを聞いていたり、仲間と遊びの打ち合わせをしたり、100ある力のうち6~7割しか出していないわけ。こいつら手を抜いているなあ、と思うよ。でもね、毎回100%の仕事をやらせてはダメなんだ。6~7割の力でノルマを達成できるようにしてやらないと長続きしないからね」
そこで社員のやる気を引き出すために中江が仕掛けたのが「賞金レース」だった。年に3~4回、社員にどのくらい営業力があるかを見るイベントで、どの「柱」のグループが一番多く稼ぎを上げるかを競わせるのだ。
競い合いのシステム
「賞金レース」の結果発表は、ホテルオークラやニューオータニの宴会場で開催した。1位を獲得した「柱」のグループには1000万円、2000万円という賞金を与え、ビリになった「柱」の幹部は、みんなの前でその場で丸坊主にさせられた。
「この時ばかりは賞金を狙って全員、本気モードで100%の力を出してきた。トップを獲るには1億以上の利益を上げなくてはならないから、本当に能力があるやつとダメなやつを明確に分けられる。
負けて悔しさを感じたやつは奮起して次こそトップになろうとハングリー精神を育てられるが、ビリで丸坊主にされても何も感じないのはいつまでたってもダメ。自分のダメさ加減を自分で徹底的に考えさせる機会でもあったね」
「賞金レース」は営業力を高める訓練だが、新入社員の教育もまた独特だった。入社すると、まず証券会社の顧客名簿をもとに電話でアンケートをとらせることから始める。アンケートの一環として、『月刊投資家』の新規読者の勧誘と年間購読セールスをさせる。仕事に馴染んできた頃を見計らって、レポートの顧問料10万円の契約獲得をやらせるのだ。