女性にフレンドリーな銭湯に
朋子 今回の改修は女性にフレンドリーな施設にしたいと思いました。クリエイティブディレクションをしていただいた高橋理子さんも、壁画を描いていただいた、ほしよりこさんも女性ですし。女性の方に沢山関わっていただいたのもとてもよかったなと思います。実は女性のサウナ室は、みんなから無しにしましょうってずっと言われてたんです。小さいスペースしかとれなくて。大黒湯を経営していたので、どうしても男女のお客様の数が明確にわかるので。女性のご利用人数は男性に比べて圧倒的に少ないということもあり、サウナも男性側だけでいいといわれました。ですがそれでもサウナを女性側に入れたいと私が切望しました。お願いだから作ってって(笑)。お客様からは男女差がありすぎるって言われることも多々あるんですけど。だからせめてセルフロウリュできるようにって。
世界に一つしかない、ほしよりこの壁画
黄金湯には「きょうの猫村さん」でおなじみのほしよりこによる壁画が描かれている。壁画は一枚の横長の絵巻物の様を呈しており、右から左へと進行する物語が描かれている。黄金湯で産湯を使った少年が成長し、恋に落ち、伴侶を得、またその子供と黄金湯に行く、継承の物語。下町の銭湯を舞台にした、この大河ドラマを見るだけでも黄金湯に足を運ぶ価値がある。
卓也 ほしさんは、絵を描かれる前にうちがどういう想いでここを作ったのかというお話をすごく沢山聞いてくださって。それを絵巻物のかたちで描いてくださったんです。
朋子 江戸資料館にも行かれてて色々江戸の文化についても調べられたそうで。その時間もすごく楽しかったとおっしゃっていたのが印象的でした。事前にした下書きを投影機で映して、足場を組んで2日間かけて筆で描いてただきました。
卓也 下絵はモルタルなんですけど、通常のお風呂屋のペンキ画ではなく、墨絵のような形で巻物のように見せるには何の塗料で描くのが一番いいのかということから考えてくださって。今回色んなクリエイターの方々が関わってくださって、みなさん伝統や地元に根付いた商売に対しての想いが強い方ばかりだったので非常にありがたく思っています。
ほしよりこの壁画、こだわりのサウナ、水風呂、外気浴の動線。
老舗銭湯らしからぬチャレンジをしてきた黄金湯は、温浴設備以外にも番台へのターンテーブルやクラフトビールサーバーの設置など革新的な試みを続けている。
卓也 何かにチャレンジすることは大変ですが、今回のプロジェクトを通してあらためて一番大事だと再認識しました。どういうルートをお客さんが好むのか。風呂、洗い場からの動線、サウナから水風呂、外気浴への動線をどうつくるのか。私たちの風呂屋としてのこだわりとデザインをどう共存させられるのか、色々と考えたんですね。
朋子 配管の立ち上がり、またぎの高さといったことから、浴槽の深さをどれぐらいにして、何センチの高さからどのくらいの量の水を落とすかみたいなことも細かく相談して。設計の方々も一から銭湯を作るということでは初めてでしたので手探りで進めました。