米兵を連れ込んだ部屋のいま
かつては貧乏村と呼ばれた村が、のちに米軍が進駐してきたことにより、大きく様変わりしたのである。パンパンだけでなく、部屋を貸した農民も、誰もが米兵たちに群がった。その時代から建っているのが、今私がいるスナックなのである。ちなみにこのスナックの2階は、パンパンたちが米兵を連れ込んだ部屋だったとも聞いていた。その事実を知っているかママに確認してみた。
「私がここを経営する前の話だからな。はっきりしたことはわからないんだぁ。店の2階には6部屋あって、私の部屋以外は物置になっていて、夏休みに孫が泊まりに来る時しか使わないんだぁ。ただ、アパートだったのは確かみたいだね」
彼女ははっきりしたことはわからないと言う。建物は戦後すぐからのもので、いくつもの小部屋があるとなると、状況的に娼婦たちの連れ込み部屋だった可能性は高いが、いかんせん目撃者がいないので、真相はすでに闇の中である。
1時間半ほど店にいたが、客は誰も来なかった。店では土日、アルバイトの女性を使っているのだが、平日はママひとりで切り盛りしているのだという。
「もう辞めようがなって、いつも思ってんだけど、自衛隊の人が2次会で使ってくれたりさ、常連さんもやってくれって言うから、まだ辞められないんだよぉー。米軍がいなくなって、神町も一度ガタガタになって、バブルで盛り返したけれど、いまは本当に厳しいなぁ。昔は給料が入ったらあるだけ使うって人もいたけど、今はそんな人はいないなぁ。それにしても、こんな不景気の時代が来るとは思ってなかったなぁ」
スナックを出ると、通りに人通りはなく、街灯が道ばたに残った雪を照らしているのだった。