娘との三角関係? 頭がパニックに
取り調べが始まった。狭い取調室で、坂本刑事と今井刑事が私を問い詰める。めぐちゃんの写真を見せて「正直に話せ」と迫ってくる。だから正直に話しているじゃないの。何もしていないって。火事がなぜ起きたのか、私が教えてほしいくらい。でも刑事たちは納得しない。
午後になって坂本刑事が「○○は認めたぞ」と言って男性が自供したという内容を見せてきた。そんなこと言われても私は知らない。すると坂本刑事はいきなり驚きの事実を告げた。めぐちゃんとあの男性のこと。性的暴行を繰り返していたというのだ。男性も認めているという。そんなことがあったなんて、まったく気づいていなかった。ショックでもうパニック状態。頭の中が真っ白になったわ。動転する私に、坂本刑事はとんでもないことを言い出した。
「三角関係のもつれから、女としてめぐを許されへんから殺したんやろ」
私と11歳の娘が三角関係? 何を言ってるの? そんなことあるわけないじゃないの。性的暴行のことを私は知らなかったし、知っていたとしたら男性とすぐ別れたし絶対許さない。そんな当たり前のことが刑事たちには通じない。
「お前は鬼のような母親やな。めぐみに悪いと思えへんのか!」
ヒントを与えて自供を誘導
大声で怒鳴られ机を叩かれて、私は混乱してきた。もともと火事で救えなかったことを「私が死なせたようなもの」と悔やんでいた。「お前がやった」と言われ続けて、助けられなかったこと、つらい思いをさせていたのに気づかなかったことを謝りたいと思った。そこに坂本刑事から「素直に認めたらいいんや」と言われて、思わずうなずいてしまった。
やがて我に返り「やっていない」と再び訴えると坂本刑事は言い方を変えた。
「やってないんやったら何で助けへんかったんや。助けへんかったってことは殺したことと同じやぞ」
そうかもしれない、とまた混乱した。取調室から出られるなら何でもいい。もう死んでしまいたかった。
そこで坂本刑事はおもむろに紙を取り出し、やったことをそこに書くように言った。でも、実際にはやっていないから何も書けない。すると坂本刑事はヒントになる言葉をあげて誘導した。私は言われるままに殺人を認める自供書を書いてしまった。これが逮捕の決め手になって、私は20年間も獄中に囚われることになってしまった。