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テレビにはまだ夢はあるのか? フジテレビ『567↑8』で行われた“レジェンドディレクター”片岡飛鳥の「血の伝承」

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演者とディレクターの相性が光る「ハイパーハードボイルドひとリポート」

「H」こと2020年入社の新人・原田和実はまだADだが、今回大抜擢され、劇団ひとりの虚実入り交じったフェイクドキュメンタリーを制作。『ハイパーハードボイルドグルメリポート』(テレビ東京)ならぬ「ハイパーハードボイルドひとリポート」だ。

 劇団ひとりは「売れたくない」とうそぶき、タクシーの運転手を恫喝したり、楽屋の洗面台で大便をしようとしたり、朝の番組のインタビュー中にブチギレしたりと「売れる」ためには必須の「好感度」を度外視した振る舞いを繰り返す。

 サインを求める親子に対し、色紙を折り曲げ拒否するとディレクターが「さすがに今のはないんじゃないですか?」と抗議。言い合いになり、お互いが手を出しケンカになってしまう。劇団ひとりもそんなやりとりにノッているのがよくわかる。

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ハイパーハードボイルドひとリポート TVerより

 そのVTRを観て江頭は「ディレクターとの関係って色々あってさ、演者とディレクターには相性があると思うんだよ」と語り始める。片岡飛鳥は自分を追い込んでくれる存在だと例を挙げた上で「そういう演者とディレクターの関係、大切にしてって言いたい」などと熱く語る。「ちょっと語りすぎたかな」と照れ笑いを浮かべる江頭が新鮮だった。

コロナ禍ゆえの不謹慎「ゼロ-1グランプリ」

 出色だったのはコロナ禍での賞レースを謳った「ゼロ-1グランプリ」。制作したのは「T」こと2009年入社の角山僚祐。司会は遠藤章造と西野未姫。審査員は黒沢かずこ、ハチミツ二郎、松村邦洋、ウエストランド井口、海原はるかという最初はなぜこのメンバーなのか不思議に思ってしまうようなメンツ。

 周りが企画に全乗っかりの中、井口だけが「この大会、何すか?」と困惑しながら「僕、審査員? 実績も残してないのに」と疑問を呈す。すると「年末にきっちり実績は残していますよ」と遠藤。ハチミツも「厚生労働省が実績認めているよ」と補足。そう、司会・審査員全員がコロナ感染の判定が「positive」だった経験がある人たちなのだ。

ゼロ-1グランプリ TVerより

 “決勝進出者”は、おいでやすこが、サンシャイン池崎、なかやまきんに君、阿佐ヶ谷姉妹、ひょっこりはん、ハリウッドザコシショウといった、大声や歌声など「音」が重要な芸人たち。だが、飛沫防止の観点からマスクを付ける代わりに声を出してはいけないというルール。それでもハリウッドザコシショウを筆頭にサイレント状態でも十分に面白く、審査コメントもハチミツが「痺れましたね。いまでも痺れているんですけどね、左手が」など巧みにコロナをネタにする。不謹慎スレスレを攻めた名企画だった。VTRを観た江頭も刺激を受け、自らも「ゼロ-1」スタイルでネタを披露するのだ。