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ピンク・レディー、郷ひろみ、山口百恵、山本リンダ…近田春夫が選ぶ「文化庁新長官・都倉俊一の名曲ベスト10」

“筒美京平とは対極の作風”

2021/04/18
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 ついでに申せば、私の初めてのTVレギュラー番組の出演も、そうしたオーディションで、プロデューサーに喋りの調子良さを買われたことがきっかけだった。そのあたりの顛末は自伝で述べているので詳しくは書かないが……。

『ペッパー警部』の元ネタは『若いお巡りさん』?

 ピンク・レディーの第1弾『ペッパー警部』は、NTVで毎週金曜日の夜オンエアーされていた人気番組『うわさのチャンネル!!』の後テーマだった。

ペッパー警部

 最初聴いたときまず残ったのは、曲ではなく歌詞の方だった。それは殆どの人もそうだったであろう。コレ、元ネタは曽根史郎の大ヒット『若いお巡りさん』じゃね? と。ただ視点はお巡りさんの側ではなく注意をされた若いカップルの側にあるという。私はその着想の柔軟性に、阿久悠の作詞家としてのスタンスの取り方の本質を見た気がしたのだったが、いずれにせよこの歌詞やタイトルについては過去色々なところで色々な人が書いているようだ。新鮮味もないので話を少し脇道にそらそうか。

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 実は今回『若いお巡りさん』の歌詞を調べていて、びっくりしたのが4番である。

もしもし
たばこをください お嬢さん
今日は非番の 日曜日
職務訊問 警棒忘れ
あなたとゆっくり 遊びたい
鎌倉あたりは どうでしょうか
浜辺のロマンス パトロール

 こんなの書いたら令和の世では警視庁あたりからクレームがついて書き直しだよ多分(笑)。これがNHKの紅白歌合戦なんかで問題なく歌われていたのだから、いやぁ古き良き時代とはよくいったものだわいと思った次第。

都倉俊一 ©文藝春秋

ピンク・レディーに感じた時代の移り変わり

 閑話休題。

 そんな訳でさてピンク・レディーのサウンドインプレッションである。これもきっと誰もが思ったことだったろうが――和声の方向性、ビート/リズムの好みなどなど――彷彿とさせられたのは山本リンダだった。

 ただ違うのは、あそこまで歌い方にしろ振り付け、パフォーマンスにしろ、アクは強くないということ。そこに時代の移り変わりをなんとなく感じたものである。

 そしてここでも、都倉俊一は作詞家阿久悠とともに、作を追うごと歌い手の人気/勢いを増大させるという“ミッション”を見事やり遂げてみせている。