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作詞家にインスピレーションを授ける作曲家

 ピンクレディー、山本リンダという2組の例をみるにつけ思うのは、やはり相性というのか、都倉俊一は阿久悠と組んだ時、いわゆる“化学反応”の起きる確率が極めて高いことだ。まぁ、それは誰の目にも間違いないのだが、その“段取り”がすべて“曲先”だったのだとするなら――繰り返しにもなるが――要するに都倉俊一のメロディや和声、リズムが、阿久悠をしてああいった世界/歌詞を書かせることになった訳で、いい方をかえるのなら、都倉俊一とは作詞家にインスピレーションを授ける才に極めて長けた作曲家であったということである。

 あらためてそう思うと、例えばフォーリーブス『ブルドッグ』のあの♪ニッチもサッチもどうにもブルドッグ! という“決め”のフレーズなどにしても、なるほどサウンドの強さが生み出したものなのかと合点がいく。納得させられる。

フォーリーブス「ブルドッグ」

都倉俊一のベストソング10

『ブルドッグ』はまさに都倉俊一の――作詞家の感性を奮い立たせるという――作曲家として能力をわかりやすくハッキリと示した作品といえるだろう。10曲を決めるならばこれはまず選びたい1曲だと思った。

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 残り9曲というと、どうしても阿久悠との合作が多くなってしまうことだけは仕方がない。そこはご勘弁をいただくとして、山本リンダでは『狙いうち』の♪ウララーウララー という意味のないリプが何より強烈に耳に残るところがいかにも都倉俊一らしいので、まず入れておきたい。あと個人的にはカバーをさせていただいた『きりきり舞い』である。あの時代の歌謡曲では異例の、ダンスビートとのマッチングの良さは今でも古びることがない。

狙いうち

 ピンク・レディーは何を選ぶか。

 これは歌詞に♪きりきり舞いよ という箇所があって、聴いた時やっぱり本質は山本リンダだったんだぁ、と確信を持てたことが嬉し懐かしいので『サウスポー』にしようかとも思ったのだが、そのことは作曲そのものとは関係ない。メロディラインの強さ、それをユニゾンでなぞるアレンジ。真骨頂といえば『渚のシンドバッド』であろうか?

渚のシンドバッド

 ペドロ&カプリシャスは2曲甲乙つけがたいが、2作目の方がヒットが難しいという意味で、技術職的な立場から敬意を表し『五番街のマリーへ』にさせていただく。

五番街のマリーヘ

“スタ誕”ということでいえば山口百恵を抜きには語れまい。

 ここは歌詞との一体感が素晴らしい『ひと夏の経験』を選ばせてもらった。その千家和也との仕事では、麻生よう子の『逃避行』も、洋楽的な和声と歌謡曲ならではの響きの混ざり具合が絶妙で、あの時代には大変新しく思えた。これも10曲のなかにはぜひ入れたい作品である。

ひと夏の経験
逃避行