男性アイドルなら、太川陽介もいいが、私は渋谷哲平の『Deep』が好みだ。昔よくラジオの番組でかけたものだ。これはサウンドが全くピンク・レディーってところに持ってきて作詞が松本隆という、組み合わせもたまらないのだが、松本隆の原風景というのか、その好みのシチュエーション、小道具みたいなものの案外ベタに窺い知れるコトバ選びが、今となっては興味深いというか、マニア/研究者向けな一曲になっているかもしれない。そんなところも楽しめるというのも理由です。
朱里エイコの『白い小鳩』は、グラディス・ナイト&ザ・ピップスの『イマジネーション』にインスパイアされたと思しき黒っぽいサウンドが魅力的なダンサブルなナンバーだ。これは本当に聴いた途端から大好きだった。決してビッグヒットにはならなかったけれど、今聴いてもこのサウンドプロダクションはカッコいいと思う。もっと色々なひとに知って欲しい曲なのである。
私の特別の一曲『ハリウッド・スキャンダル』の魅力
そして最後に、これが本気で一番好き! という都倉俊一作品であるが、私は迷うことなく『ハリウッド・スキャンダル』を挙げようと思っている。
このわたくし、郷ひろみの声には絶対に筒美京平しかないと、いまだに頑なにそう思い続けるものなのだが、ただこの曲だけは例外なのだ。コレは郷ひろみのなかでも本当に名曲のひとつだと思う。
『ハリウッド・スキャンダル』に一番思ったのは、いわゆる“都倉俊一”っぽさのあまり感じられなかったことだ。
作曲家都倉俊一の音の特徴については、今回印象を色々ないい方で述べてきたが、今一度その多大なるヒット曲群を振り返ってみれば、いわゆる甘酸っぱさ、切なさ、胸にキュンとくるといった感じを持つものの案外少ないことに気付かされるだろう。
この『ハリウッド・スキャンダル』にはそうした意味で、都倉俊一らしからぬ、といっては失礼かもしれないが、大変“ロマンティックな気分”、いい換えればそこはかとない哀愁が漂っている。
いや実際の話、この曲を初めて聴いたとき、都倉俊一にしては珍しくメロディが2拍めから入るということもあって、すぐには誰の書いた曲なのか気づけなかったぐらいだ。
『ハリウッド・スキャンダル』は、何か他の都倉俊一作品とは違う。私の特別の一曲なのだ。そしてその思いはこれからも変わることがないだろう。
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