多才で多忙なマシュー・マコノヒーが、小さな夢のひとつを叶えた。個性派監督ガイ・リッチーのギャングスター映画に主演することだ。
「社会のはみ出し者が出てくる、小規模な映画。テンポが良く、ユーモアがあって、人が死ぬ時もおふざけがある。ガイが作るそんな砂場で、僕も遊んでみたかったんだよ」
最近ではディズニーのミュージカル映画『アラジン』をヒットさせたリッチーだが、マコノヒーが主演した本作は、デビュー作『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』を思わせる、彼の原点に立ち戻るような作品。普通ならばイギリス人にしか用のないリッチーのギャングスター映画にマコノヒーが入って来られたのは、リッチーが主人公ミッキーをアメリカ人に設定したおかげだ。
イギリスでマリファナビジネスを始め、大成功を収めたミッキーは、今、この事業を売ろうとしている。興味を持つ人はすぐに出てくるも、そこからトラブルが起こり、多くの人が巻き込まれていく。
「商品の質の高さを誇るミッキーは、それを公正な価格で、紳士らしく売ろうとする。でも、この世界では誰も公正な価格を払いたがらないのが問題(笑)。ミッキーをアメリカ人にすることは、ガイが最初から考えていたこと。ガイは、イギリスの小さな部分の話を語るのが好きだが、そこにアメリカ人を入れてくると一気に大きな感じになると思ったんだ。外から来た人だから見えることがあるというのもまた面白い。ミッキーは、イギリスの商品をイギリス人に売っているが、外から来た彼だからこそ、よりうまくやれているのさ」
今作について、マコノヒーは北米公開前からたっぷりと語ってきている。2015年から母校テキサス大学で非常勤講師を務めてきた彼は、19年秋から教授に昇格。その最初の学期で、『ジェントルメン』の製作過程について教えたのだ。自らも映画学を専攻しただけに、「当時、僕もこんな授業を受けたかったよ」と、実体験にもとづく授業を自己評価する。
「学生たちが僕を映画スターとして見ること? それはないね。初回だけだ。彼らはもう僕を見慣れている。すぐにそこを乗り越えてもらうよう、僕もすごく配慮していたよ」
彼のキャリアだけを見ても、若い人には勉強になることが多いはずだ。ロマンチックコメディやアクション映画で人気を集めた彼は、11年ごろからシリアスな俳優へと方針転向。その結果、実力派の仲間入りを果たし、14年にはオスカーを受賞したのである。
「最も停滞していた時、小さなチャンスを見つけて、うまく行きますようにと飛び込んだ。だが、別の時には飛び込んで撃沈したこともあるよ。そのどちらもある。この業界では辛抱強さが必要とされるし、同時に大胆さも必要だ」
最近、テキサス州知事への出馬が噂されているマコノヒー。本人も「考えている」というが、そのジャンプは果たしてどんな結果になるだろうか。
Matthew McConaughey/1969年生まれ。『ダラス・バイヤーズクラブ』でアカデミー賞主演男優賞を受賞。昨年出版した自伝『Greenlights』は100万部突破。ワイルドターキーとコラボレーションしたバーボンも好評。
INFORMATION
映画『ジェントルメン』
http://www.gentlemen-movie.jp/