娘・清美さんが持たされた「ちくりノート」
●平成8年1月上旬ころ
〈写真には、手前におせち料理用と思しき重箱が写っていることから、この写真は、平成8年1月上旬ころに撮影されたものと推測される。この写真では、由紀夫は、すの子の上に、かつ、すの子で作られた草履様のものを置き、そんきょの姿勢で座っている。由紀夫は痩せ細り、その身体には多数の痒疹が発生するなどしている。由紀夫の正面には、向かい合うような姿勢で甲女がそんきょの姿勢で座っており、甲女の手には開かれた手帳と鉛筆が握られている。
この写真に写された由紀夫の身体的特徴から推測される虐待状況は××(※鑑定医名)鑑定のとおりであり、これが、甲女の供述内容と良く整合していることは強調に値する。また、由紀夫の足元にあるすの子や、すの子製の草履様のものは、甲女が供述する「領土」と「下駄」であり、甲女が手にしているのが「ちくりノート」であって、この写真からも甲女の供述が真実であることが明らかである〉
ここに出てくる「ちくりノート」とは、松永が清美さんに常に持たせていた手帳で、由紀夫さんが松永の指示等にわずかでも反した際には、記載して報告することを強要していた。松永はその報告をもとに由紀夫さんに虐待を加え、もし記載漏れが発覚すれば、清美さんが虐待を加えられることになっていた。
台所の床にはいつくばるようにして食事を
●同年1月ころ
〈前後の撮影内容から推測して写真は、同年1月ころ以降に写されたものと推測されるところ、この写真には、テーブルの側でポーズを取っている被告人両名の長男と、その背景で、絨毯の敷かれていない畳の上に新聞紙を敷き、その上で正座している甲女の姿が認められる。被告人両名が、甲女には絨毯の上に上がらせず、絨毯の外で、かつ新聞紙の上で正座をさせていたことがうかがわれる〉
●同年6月17日ころ
〈この時期は、由紀夫殺害・解体後となるが、写真には、和室のテーブルで食事をしている被告人両名の長男の背後で、台所の床にはいつくばるようにして食事を取っている甲女の姿が認められる。このように、由紀夫事件後も、被告人両名が、甲女を、長男とは差別して虐待してきたことは明白である〉
こうした状況を写真に残す松永の神経を疑ってしまうが、逆にいえば、これらの写真があったことで、清美さんや緒方の証言が裏付けられたということがわかる。(第56回に続く)