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松永が撮影した記録写真の内容

●平成7年(95年)2月19日ころ

 

〈この時期に撮影されたと思料される写真(※資料番号は省略、以下同)では、「片野マンション」の台所の片隅で甲女が正座している様子が写されており、その背後には電気コードが見える。この電気コードの一端は通常のプラグであるが、他方の端は2本に裂かれ、かつ内部の導線が数センチにわたって露出させられている。また、同月26日ころ撮影されたと推測される写真には、暗い表情で、やはり正座した姿勢で電気コードを束ねている甲女が写っている。その状況から、この写真は、通電直後に、使用済みとなった電気コードを片付けさせられているところと推測される。これらの写真から、この時期ころには通電暴行を開始していたことが明らかである〉

●同年3月5日ころ

 

〈この時期に撮影されたと思料される写真以下には、いずれもマジックペンで、その瞼には睫毛様の落書きを、前頭部の生え際には頭髪様の落書きをされた由紀夫が、キッチンタイマーを前に時間を計られつつ食事をし、かつ、ピースサインをしている姿が写されている。しかし、次の写真の由紀夫の強ばった眼差しを見れば、由紀夫がいかに屈辱的な思いで落書きをされ、この写真を写されたかは一目瞭然である。また、この写真から、この時期ころは、早くも食事の時間制限が開始されていたこと、由紀夫の食事内容はラーメンとボウルに盛ったご飯であったことも明らかであり、この点も甲女の供述と良く整合している〉

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 ここに出てきた写真こそ、本連載第31回で記した、由紀夫さんとかつて交際していた安田智子さん(仮名)が、事件発覚後に警察からの事情聴取を受けた際、写真を取り出した捜査員から、「最後の1枚は見ない方がいいですよ」と言われたものである。

写真はイメージ ©️iStock.com

「領土」と称する段ボールで行動を制限

●同月10日ころ

 

〈この時期に撮影されたと思料される写真には、「片野マンション」の台所に、1枚の毛布が畳んで置かれている様子が写されている。「片野マンション」の台所はビニールクロス張りであり、通常就寝に用いるべき場所は2つの和室のいずれかであると思料されるところ、このような場所に毛布が置かれていることは、同居後は和室で寝ることさえ禁じられていたという甲女の供述に合致する〉

●同年4月15日ころ

 

〈この時期に撮影されたと推測される写真には、「片野マンション」の台所に1枚の段ボールを敷き、その上に、上半身はトレーナー、下半身はパンツ1枚だけを着用した姿で正座している甲女が写っている。この様子は、被告人両名が、由紀夫と甲女には室内で自由に行動することを禁じ、「領土」と称する段ボールの上にいることを常に強いていたという甲女供述によく合致する。なお、甲女のすぐ側にたたずんでいる被告人両名の長男の足元にはかかる「領土」など存在しないことからも、かかる扱いが虐待の一環であったことは明白である〉