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娘・清美さんの供述による由紀夫さんの行動

 じつはこの際の由紀夫さんの行動について、公判での清美さんの供述は、一部が異なっている。その要旨は以下の内容である。

「帰宅してから、緒方から早く浴室を掃除するように言われた。そこで浴室の床に敷いてあった雑誌を取り除いたり、床や壁をシャワーで洗い流したりして掃除した。緒方も雑誌や大便を片付けて袋に入れる手伝いをした。お父さんは掃除の間も浴室内におり、浴室入口付近であぐらをかき、頭を床につけていた。お父さんは私が尻の下にあった雑誌をどけるときに、尻を少し浮かせるように、ゆっくりとした動作で体を動かした。そのとき、緒方が『はよどかんか』などと声をかけた。お父さんは、そのとき以外はまったく体を動かすことはなかった。誰とも話さず、始終無言でいた。緒方は洗面所の浴室入口付近に立っていた。松永は、洗面所付近を行ったり来たりしていた。私が浴室の壁や床をシャワーで洗い流していた間、お父さんは動かずそのままの状態でいたが、「グオーグオー」といびきをかき始め、その後ぐったりした。松永は、お父さんがいびきをかき出したとき、緒方に対し、『あんたがご飯たべさせてないけやろうが』などと言った。その後、松永と緒方がお父さんを浴室から運び出し、台所の床に仰向けに寝かせ、緒方がお父さんのカッターシャツを脱がせた」

 由紀夫さんが浴室の清掃時に、外に出たか否かで異なっているこの両者の供述に対して、判決文は〈緒方は、はっきりとそのような記憶があると述べている上、その供述内容は、浴室の状態、甲女(清美さん)が行った掃除の方法等に照らし、甲女供述に比較し自然である〉として、緒方の記憶を採用している。

写真はイメージ ©️iStock.com

松永が行なった蘇生措置

 なお、細かい話になるが、先に〔緒方の供述に沿って〕とした判決文にある、松永が〈緒方に対し、「あんたがご飯食べさせてないけやろうが」〉と言った箇所については、緒方の供述ではなく、清美さんの供述をもとにしたものである。

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 この時点で死亡していたとみられる由紀夫さんに対して、松永は蘇生措置を取っていた。その様子が判決文にある。

〈松永は、由紀夫に対し、三、四十分間くらい、人工呼吸(マウス・ツー・マウス)をしたり、緒方に心臓マッサージをさせたり、甲女に足をもませたりした。

 

 さらに、松永は、「万一蘇生するかも知れないから通電してみよう。」などと言って、由紀夫の胸部等にクリップを取り付け、何度か通電したが、由紀夫は身体を動かさなかった〉

 通電は胸だけでなく、足や指にも行われたという。由紀夫さんの死亡を確認した松永と緒方は、遺体を浴室内に運び入れた。ちなみに、この時点で緒方は第二子を身籠っており、出産したのが翌月であることから、かなりお腹が大きな状態であったとみられる。