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四半世紀かけて“完結”したエヴァにファン喝采…シンジの「最後の声」に隠された意味

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2021/05/23

綾波レイの女性人気が高い理由

 エヴァのキャラクターたちについて興味深いデータがある。老舗のアニメ雑誌『アニメージュ』の新年2月号には、毎月発表している「好きなキャラクター」を100位まで発表する企画がある。エヴァンゲリオン放送後の97年、98年の2年間は、その投票の男女比が掲載されていたのだ。

 
 

 

 97年のグラフを見ると、キャラクター投票は異性からの票が多い傾向がある中で、碇シンジは男女双方から支持されている。一瞬「シンちゃん、女子人気あるじゃん」と思ってしまったが、他の男性キャラの女子投票率の高さと比較するとむしろ「男子キャラとしては男子の共感が高い」と言った方がいいのかもしれない。

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 綾波レイの女性票比率もかなり多い。表面的に見れば、これは意外な現象にも見える。エヴァという物語の中で、綾波レイは物語が進むにつれ、碇シンジの母ユイの幻影としてゲンドウに作られた人工生命であることが明らかになっていくからだ。旧劇場版では、綾波レイが人類補完計画により増殖し世界を飲み込み「綾波レイは作られた幻想だ」ということが繰り返し描かれる。

 だが同時に、そうした「人工的に作りだされ、使い捨てられていく綾波レイ」の悲劇性は女性観客に不思議なシンパシーを持って受け止められてきたのではないか。97年、98年の『アニメージュ』の年間投票のデータを集計すると、綾波レイへの女性投票数はエヴァキャラクターの中で最も多い。

 綾波レイは今年の1月に『女子SPA!』が37−43歳女性200人を対象に行った「アラフォー女性エヴァ人気投票」でも、複数投票の47%というダントツ1位の支持を集めたデータがある。90年代も今も、一貫して女性の人気が高いキャラクターなのだ。

ランキングからわかる、アスカについての興味深い事実

 97年2月号と98年2月号の年間アンケートを比較すると、惣流・アスカ・ラングレーについても興味深い事実がわかる。97年2月号は96年分、つまりエヴァTV放送後半から劇場映画公開前、98年2月号は97年分、旧劇場版のいわゆる「春・夏エヴァ」公開年の人気投票の年間データなのだが、春・夏の旧劇場版のショッキングな内容に登場人物たちへの投票数が前年度より下がる中、アスカに対する女性票はほとんど減っていないのである。

 

 旧劇場版は良く知られるように、性がモチーフとしてとりあげられる。碇シンジが意識のないアスカを性の対象にし、綾波レイは人類補完計画の快楽のために複製され消費され、アスカはラストシーンでシンジを拒絶する。

 ある意味ではファンを含めた文化に鋭い批評性を向けた作品だが、投票データを見る限り、より大きく減ったのは男性ファンであり、相対的に減りの少ない女性ファンが残ったことで、エヴァキャラクターの女性ファン率はむしろ上がっているのである。そしてあの賛否半ばした旧劇で、アニメ誌の投票結果を見る限り、アスカへの女性支持はほとんど揺るいでいないのだ。