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林原や庵野が繰り返していた、アニメ界への問題提起

 90年代のアニメ誌を読み返していて気がつくのは、綾波レイ役の林原めぐみが、その絶対的人気にも関わらず、何度も何度もコメントの中でアニメ界の現状を憂慮する言葉を発していることだ。

 圧倒的な状況にトップ声優でありながら、『月刊ニュータイプ』97年8月号の旧劇エヴァ公開コメントで「アニメはどこかで娯楽、余暇の部分があると思っている。この完結(旧劇夏エヴァ)からみなさんが何かを探っていってほしい」(要約)アニメージュ98年6月号の年間声優1位コメントでは「人からもらった元気はいつか消え、また欲しくなる。ゆっくりでいいので自分自身の中から元気を生み出せる人になってほしい。時には私のことをすっかり忘れてしまうくらいの日々があったら、それも私はうれしいのです」(要約)というコメントを残している。そうしたスタンスは、今年2月に出版された彼女の回顧録『林原めぐみのぜんぶキャラから教わった 今を生き抜く力』や、月刊ニュータイプの最新WEB記事インタビューの中でも変わらない。

 旧劇場版の前後に、庵野秀明が作品の中、あるいはインタビューで発したアニメ界への問題提起は大きな賛否の波を起こした。だがそれはファンと最前線で関わる声優たちの間でもより切実で繊細な問題として共有されていたと思う。

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「シン・エヴァンゲリオン劇場版」 公式サイトより

 ムック『宮崎駿と庵野秀明』の対談の中で、宮崎駿は「庵野の最大の取り柄は正直に作る所だ」と語る。庵野秀明は私小説としての率直な内面告白のテーゼと同時に、自我に対するアンチテーゼとして生身の他者を作品に取り込み、作品世界の深さと広さを同時に確保してきた。だからこそ、シンジとゲンドウの物語を年を重ねた自分の一人称で語り終えたあと、男性である自分=シンジに対する他者として導入されたレイやアスカたちの物語は、あえて同じ手法で語り終えることを避けたように見えるのだ。