1ページ目から読む
21/21ページ目

──ドワンゴは、他の放送とは異なり、開発者の方々にもスポットライトを当てた企画を行ってきました。そういう企画をご覧になって、いかがでしたか? 個性的な人が多いなぁとか(笑)。

「確かに、開発者の方々は個性的な方が多かったですね(笑)。あっ、YSSの山下さんは、とても紳士的な方でした」

──そうですね。山下さんは人格的にも素晴らしい方で……。

ADVERTISEMENT

「でも、ソフトはいいですよね」

──え?

間違った成長をしたら、バージョンを戻せばいいだけだから。人間は、そうもいかないので(笑)」

 そう言って笑う豊島の目を見て、私は……背筋に冷たいものを感じた。
 その笑顔には、引き返すことすらできない場所へと進んでしまった者の孤独と、人間から隔たってしまった自分への満足感のようなものが、同居していたから。

 同世代の棋士の中で……いや、人類の中で、豊島と同じバージョンの者は存在しない。
 だからこそ藤井聡太にとって豊島の指し手は驚きに満ちているのだろう。

 豊島将之の中には今も、狂気の残滓が鼓動している。

(続く)

第2章 最強の棋士像

第3章 そして、叡王へ……