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 深緑野分『戦場のコックたち』の舞台は第二次大戦の欧州戦線。米軍コック兵を主人公にしたミステリで、「80歳の祖母が、70年前の戦争を思い出すと今でも泣けると言っていた。自分が80歳になった時、10歳の頃を思い出して泣けるだろうか。この作品は、戦争で戦っていたのは私たちと同じ人間なのだと感じさせてくれる。凄惨なものは子供の目に触れさせなくていいという議論もあるが、私たち高校生にこそ読む意味がある」「前線で戦う兵士の心情が丁寧に描かれ、ミステリを入れることで飽きさせない」との支持が寄せられた。

 西川美和『永い言い訳』は妻の突然の死を描く小説だけに、「読んでボロ泣き。ちょうど大好きだった曾祖母が亡くなって、身近な人が死んでも大声で泣き喚く人もいれば、主人公のようにそうでない人もいることが実感できた」

「僕も祖父が亡くなった時、実はあまり悲しくなかった。人間の感情って単純じゃないよ、ということがリアルに描かれていて説得力がある」

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 と、自らの体験に引きつけて読む参加者が目立った。

「妻が亡くなった時に不倫してるなんて、主人公は最っっっっ低! 救いようがないと思ったが、2回目に読むと、主人公が子供たちと暮らしながら次第に自分の気持ちに整理をつけていくところがいいと思えた」と、読み返すことで評価が変わった女子も。

 柚木麻子『ナイルパーチの女子会』は女性どうしの友情、SNS依存など身近な世界が題材であるからか、「自分も一歩間違えたらこうなってしまうのではと思って怖くなった」「ストーカー、不倫と衝撃的だが、カルピスの原液のような話だ。薄めたら女子の誰もが持っている部分が描かれている」と共感の声が続く。

 一方で、「心が抉(えぐ)られすぎてつらい。後輩に勧められるかと考えると×だ」「生理的に受け付けない。読んで精神的にやられてしまった」と、インパクトの強さゆえか、賛否、好悪がくっきりわかれた。

「『つまを』が男性から見た理想の女性を描いてるとしたら、こっちがまあ生身の女子だよね」との意見には、女子の多くが共感した様子。

 宮下奈都『羊と鋼の森』は今年の本屋大賞受賞作。予選会でもトップの票を集めた。

「冒頭から森の匂いがした。綺麗で透明感のある文章。音楽と言葉ってこういうふうに繋がるんだと感激した」「読むとほっとできる幸せな本。寝る前に読むとゆったり眠りにつける」「他の本は映像化してもよいが、この本だけは映像にできない。もう少しこの文体に浸っていたい」「人に勧めたら『ありがとう!』と感謝される本」と賛辞が続く。

「『ナイル』は剣、『羊』は盾。タイプは違うがどちらも豊かな小説」という意見や、「一生とっておきたくなる装幀」と造本への評価もあった。

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