生命の大いなる環の中へ
――ゴミとして処分されるというのが理想の葬られ方なんですね。
立花 いえ、もっといいのは「コンポスト葬」です。遺体を他の材料と混ぜ、発酵させるなどしてコンポスト(堆肥)にして畑に撒くのです。このアイデアを知ったのは1993年(平成5年)にNHKでコリン・ウィルソン(『アウトサイダー』『オカルト』などの著作で知られるイギリスの作家。2013年没)との対談番組を作るために、イギリスに1週間ほど滞在していたときでした。コリン・ウィルソンの友人の1人となぜか気が合い、雑談しているうちに、人の死に方の話になりました。彼がいうには、火葬は1刻も早くやめ、コンポスト葬にすべきであると。そうすれば他の動物と同じように、人間の肉体も自然に回帰できるというのです。
私もこの意見に賛成です。人間以外の生物は死ぬと遺体を別の生物に食べられるか、微生物に分解されるかして、自然の物質循環の大きな輪の中に入っていきます。人間の遺体の場合、土葬の頃はよかったのですが、火葬が主流の現代では、誰にも食べられず、ガスとして無機物に転化していくことになります。これでは人間が生物界の一員であるとはいえません。
だから僕の葬り方としては、コンポスト葬が理想ですね。チベットで行われている、遺体を刻んでハゲタカに食わせる「鳥葬」も理論的には悪くないけど、美学的にはチョッとどうかなと思います。海に遺灰をまく散骨もあるようですが、僕は泳げないから海より陸のほうがいい。コンポスト葬も美学的かつ法的に難点があるから、妥協点としては樹木葬(墓をつくらず遺骨を埋葬し樹木を墓標とする自然葬)あたりがいいかなと思います。生命の大いなる環の中に入っていく感じがいい。
(取材・構成:サイエンス・ジャーナリスト 緑慎也)