ジャーナリストで評論家の立花隆さんが、4月30日、80歳で亡くなりました。立花さんは『死はこわくない』『臨死体験』などの著作があり、安楽死や脳死など人間の死について取材を重ねたことでも知られています。その立花さんが出演された「NHKスペシャル 臨死体験 立花隆 思索ドキュメント 死ぬとき心はどうなるのか」について、週刊文春に語ったインタビューを再公開します。(全3回の2回目。1回目3回目を読む)

(初公開:週刊文春2014年11月6日号。記事中の肩書・年齢等は掲載時のまま)

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死とは一体何なのか、いくら考えてもわからない

――前回は評判を博したNHKスペシャル『死ぬとき心はどうなるのか』に沿って、立花さんの「死は怖くない」というメッセージの意味を紹介しました。今回は、立花さんの死生観の変遷についてうかがいたいと思います。最初に死を意識したのはいつごろですか。

立花 中学生のときですね。毎朝挨拶をしていた隣家のお婆さんが死ぬときに呼ばれて臨終に立ち会ったときです。間もなく亡くなって、さっきまで生きていた人が、ただのむくろになってしまった。これはショックでしたね。子供から大人になる過程で誰でも死を怖いと思いはじめる時期が来るものですが、それが僕の場合は中学生だったわけです。

 僕の長女はかなり早くて、何が原因か3歳のときに「死ぬのが怖い」と大騒ぎしていた。今では本人は、ぼんやりとしか覚えていないようですが。

©文藝春秋

――死の恐怖はその後、薄れていったんですか?

立花 日常的にはそんなものすぐに消えますが、心の奥底ではかなり後までつづいたんだと思います。結局、死への恐怖があったから、僕は哲学に傾倒するようになったのだと思います。死とは一体何なのか、いくら考えてもわからない。そうかといって考えることをやめることもできず、観念の世界にどんどん深入りしていった。