中村修九段が史上24人目となる通算800勝を達成した。将棋界では節目の記録として通算600勝を将棋栄誉賞、800勝を将棋栄誉敢闘賞、1000勝を特別将棋栄誉賞として表彰している。
「600勝の時はそうでもなかったんですが、今回はあと1勝になってからは意識していましたね。キリの良い数字を達成でき、皆さんに喜んでもらえてうれしいです。振り返ってみると1500局とは多く指してきたなあ。痛い負けが色々と多くて(笑)。
一番印象に残る勝ちですか? 勝浦先生(修九段)に勝って、初タイトル挑戦を決めた棋聖戦の挑決でしょうか。もちろん、初めてタイトルを獲った王将戦や、昇級を決めた順位戦など、形に残る結果を出せた対局はやはり印象に残りますね。今後の目標は、少し割っていますが、100勝の貯金をキープすることですね」
中村九段が語るように、形に残る棋士のステータスとしては通算タイトル数や各棋戦のランキングに目が行きがちだが、それらの栄誉を受けるためには勝星を積み重ねる必要があるのは言うまでもない。棋士が上げた勝ち数について改めて考えてみる。
1年で40勝を超えればまずは最多勝争いに加わる
まず、直近の10年間の年度最多勝を見てみよう。
2011年度 44勝 羽生善治、豊島将之
2012年度 51勝 羽生善治
2013年度 42勝 羽生善治
2014年度 43勝 菅井竜也
2015年度 41勝 佐藤天彦
2016年度 48勝 千田翔太
2017年度 61勝 藤井聡太
2018年度 46勝 佐々木大地
2019年度 53勝 藤井聡太
2020年度 44勝 藤井聡太、永瀬拓矢
1年で40勝を超えればまずは最多勝争いに加わるといえそうだ。そしてこの10年間における年度勝ち数の第10位は、大体30勝前後になっている。そして勝率の10位が7割を切るか切らないかという辺りだ。
そのことを踏まえて、年間30勝というペースについてもう少し考えてみたい。仮に竜王戦が4組、順位戦がB級2組、そして他棋戦でのシード権もまったくない中堅棋士がいるとする。そのような棋士が以下のような成績だとどのような結果が残るか。
竜王戦 4勝2敗or 3勝2敗
順位戦 7勝3敗or 6勝4敗
他棋戦 2勝1敗×9棋戦(日本シリーズ及び新人棋戦には参加資格がないものとする)
極端なシミュレーションだが、年度30勝にやや届かないという結果になった。この数字では竜王戦と順位戦では昇級に届かず、他の棋戦でも3回戦敗退では目立つ成績とは言えない。だが勝率は6割を超えているのである(ちなみに昨年度の6割超えは31名)。こう考えると年間30勝は高いハードルだ。これを20年続けて、初めて将棋栄誉賞に到達するのである。
昨年度が順位戦初参加(対局数が多くなる)となった4名の棋士の中で、もっとも多く勝ち星を上げたのは31勝の渡辺和史四段だった。同様の条件で振り返ってみると、17年度の藤井聡太二冠は別格(61勝)としても、同年度では大橋貴洸六段も46勝を上げており、さかのぼっては増田康宏六段の35勝(15年度)、千田翔太七段の36勝(13年度)、船江恒平六段の32勝(11年度)が、直近10年における初年度の30勝越えとなる。