文春オンライン
「『負け運』は良い投手につく能力なんですよ」野球ゲームの選手データどう決める? コナミに聞いてみた。

「『負け運』は良い投手につく能力なんですよ」野球ゲームの選手データどう決める? コナミに聞いてみた。

2021/07/10
note

選手たちのリアルなフォーム、どうやって作っているの?

「モーションキャプチャー」で再現されるフォーム

――「プロスピ」では、そうしたひとつひとつの投球・打撃フォームからすごくリアルです。あのモーションはどうやって作っているのでしょうか。

山口:人の動きをデジタル化する技術「モーションキャプチャー」を使っています。野球の経験者にプロ野球選手の映像を見せながら真似てもらい、その動きのデータを取り込み、ゲームに反映させています。そして選手の顔と体形は、実際に開幕前のすべてのキャンプ地に行き、選手の協力を得て、3Dシステムで撮影しています。

――えっ、野球経験者が真似ているんですか!?

ADVERTISEMENT

松井:本当は投球・打撃フォームも全部撮らせてほしいのですが、本当にやったらどれだけかかるのか……。何よりキャンプは選手にとってもデリケートな時期ですからね。

――そういわれるとたしかに……。「選手ファースト」で考えると邪魔をしてしまうのは本意ではありませんね。

松井:さらに言えば、ヤクルトの青木宣親選手のように一年に何度もフォームを変える選手もいたりしますからね。とはいえファンから突っ込まれないよう、極力対応しようとしています。

豊原:ファン心理は大事にしないといけません。見た目の再現度について、ファンの皆さんからの要求度はどんどん上がっています。リアリティーの追求の要求が、昔とは決定的に違うところです。開幕前のキャンプも足を運び、どんな準備をしているか。新しい球種を習得しているかなども観察しています。

球場にも毎年足を運んで取材を続けている。データが様々に撮れるようになった分、ゲーム機の性能とも勝負になっている

山口:選手だけでなく、球場も毎年訪問して、さまざまな角度から撮影するなど取材しています。今はレーザースキャンを使い球場の形状はもちろん、客席の位置など360度にわたってあらゆる図形的なデータを収集できるようになっています。ただ一方で、ゲーム機の性能の限界もあります。例えば甲子園球場は4万席以上ありますが、それを全部反映させるのは……。

Switch参入で「プロスピ」に訪れた変化

――それだけたくさんの客席をすべて反映すると遊んでいるプレイヤーも目移りして大変そうです(笑)。毎年取材して……というお話がありましたが、では、最新作「プロ野球スピリッツ2021」のポイントは何になるのでしょうか?

山口:対応ハードがNintendo Switchということで、プレーのしやすさに重きを置いています。具体的には投球のシステムを見直しました。

 従来の「プロスピ」は「投げるコース」と「リリース」を同時に操作していました。プロスピが「野球としての一球ごとの間」を大事にしている分、パワプロに比べて試合時間が長くなる傾向があり、ゲームのテンポ感をアップさせるためです。

 それを今回は、「投げるコース」を決めてから「リリース」するようにしました。実際の野球に近づけつつも、気軽に遊べるよう配慮しています。他にもボールのスピードの調整、打ちやすいようアシストの機能を高め、投打のバランスを全面的に見直しました。Switchはライトユーザーが多く、繊細で複雑な操作に不向きと判断したからです。Switch向けに搭載した機能は他にもあって、例えば今回4人同時にプレーができるようになっているんですよ。