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報じられない事件

 CIDは日本占領を担当した連合国軍総司令部(GHQ)の参謀第2部(Gー2)に所属し、「日本のFBI」と呼ばれた民間諜報局(CIS)の一機関。時期によって「対敵諜報課」「民間諜報課」と呼ばれた。

 この間、事件に関して新聞記事になったのは朝日(西部)で2本。いずれもアメリカ軍側の発表で、直接事件には触れていない。

アメリカ軍は間接的にしか事件の報道を許さなかった(朝日)

“逃亡兵は報告を” 小倉憲兵隊から(7月15日付朝刊「北九州版」)

 小倉地区憲兵司令官ジョーン・O・ロバーツ大尉は14日午後5時、北九州市民に対し、次のように要望した。

 数名の黒人兵と白人兵が所属部隊に帰属しておりません。日本の方で黒人兵を見つけたら、直ちに小倉憲兵隊長室(電話(5)5416)、あるいは北九州、関門地区の各警察署にあらゆる黒人兵の所在を報告してください。また、白人兵で所属部隊に帰らないとみられる全ての白人兵も同様、憲兵隊長室、あるいは警察署に報告してください。

 米軍が遺憾の意を表明(7月18日付朝刊「北九州版」)

【17日、在小倉PIO(渉外部)発表】当地米占領軍司令官が本日語ったところによれば、「日本の治安維持に従事していた米占領部隊の一部が、国連軍として南(朝)鮮政府の防衛のために配置転換されたことは、日本人の権利、安全が無視されたということでは全くない。朝鮮に発生した事件の衝撃のために全世界の注視の目が世界のこの一角に注がれている。米軍部隊が国連警察軍として瞬間的に指定を受けたことは、日本国民に対するわれわれの責任の重大さをいささかも減少するものではない。当地の米軍にとって不吉な事件が発生したことは、それがいかなるものであっても遺憾の極みである。かかる事件が隔離された事件として取り扱われることは、日本国民の米軍に対する嫌悪の情を減少させるものではない。このような全ての違反事件は、陸軍当局により起訴され、裁判に付されるであろう」 

事件について、アメリカ軍はこうした形の陳謝しかしなかった(「新九州」)

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 この談話は同じ日の地元夕刊紙「新九州」にも「北九州市民へ 親密なる交際へ私は全力を盡(尽)す」の見出しで載っている。しかし、兵隊たちが軍事裁判にかけられた形跡はなく、事件が実際にどう処理されたのかは分からない。「戦時逃亡罪だが、朝鮮戦争の戦況が悪いため、裁判にかける余裕がなく、全員朝鮮へ送るとMP司令部で聞いた」(小倉市警警備課渉外係巡査)という証言も。