ほとんどの場合、ダイエットは成功しません。どうしたって、ダイエットには「ダイエットすると太る」という、“不都合な真実”があるからです――

 そんな衝撃的な“真実”を膨大なデータとともに紹介した一冊が医師の永田利彦氏の著書『ダイエットをしたら太ります。 最新医学データが示す不都合な真実』(光文社新書)だ。ここでは同書の一部を抜粋。ダイエットがもたらすネガティブな影響について紹介する。(全2回の1回目/後編を読む)

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不健康な体重コントロールを繰り返す若者たち

 ダイエットすると、太る。

 このパラドックスを、あなたは信じますか?

「やせようとして、食事を減らしたりするのだから、当然やせるはずだ」と、思うでしょう。「ダイエットすると太るなんて、詭弁じゃないの?」と。実際、食べなければやせますしね。

 いったい、どうなのでしょうか。

 2011年(電子版)に発表されて、注目を集めた研究があります。ミネソタ大学(米国)で体重関連の健康問題を研究している公衆衛生の教授、ダイアン・ニューマーク-ステイナー博士が、ミネアポリス近郊の中高生1902人を、10年間にわたって追跡調査した研究です。

 内訳は、女子学生が1083人、男子学生が819人。調査開始時の平均年齢は12.8歳で、終了時の平均年齢は23.2歳。つまり、おおよそ13歳から23歳までという、思春期から大人の入り口までの期間です。

 ニューマーク-ステイナー博士はまず、彼らに「この1年間に、どれくらいダイエットしたか」を尋ねました。ダイエットとは「体重を減らすように食べ方を変えること」です。この問いに、「なし」「1~4回」「5~10回」「常に」で答えてもらい、「なし」を除く人たちを「ダイエットをしたことがある」としました。

 さらに、「この1年間に、不健康な体重コントロールをどれくらいしたか」を尋ね、同様に「なし」「1~4回」「5~10回」「常に」で答えてもらい、「なし」を除く人たちを「不健康な体重コントロールをしたことがある」としました。不健康な体重コントロールとは、以下の(1)~(9)です。

(1)絶食

(2)ほんの少ししか食べない

(3)ダイエット食品やダイエットドリンクの使用

(4)食事を抜かす

(5)より多く喫煙する

(6)ダイエットピルの使用

(7)嘔吐する

(8)下剤の使用

(9)利尿剤の使用

 調査は3回で、1回目(開始時)が1998~99年、2回目が5年後の2003~04年、3回目(終了時)が10年後の2008~09年です。

 1回目と2回目にダイエットと不健康な体重コントロールの有無を尋ね、3回目にはその後の状態を尋ねました。

 調査の結果は、驚くべきものでした。

 まず、1回目と2回目の調査の両方で「ダイエットをしたことがある」と答えた人は、女子学生の37.8パーセント、男子学生の10.3パーセントに及んでいました。つまり、4割近い女子学生と、1割を超える男子学生が、何年にもわたってダイエットを繰り返していたのです。

 これだけでも驚きなのですが、なんと「不健康な体重コントロール」を1回目と2回目の調査の両方で「したことがある」と答えた人はさらに多く、女子学生の43.7パーセント、男子学生の18.7パーセントに上っていました。ダイエット(体重を減らすように食べ方を変える)を繰り返していた人よりも、不健康な体重コントロールを繰り返していた人の方が多かったのです。