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「少ししか食べない」「食事を抜かす」は減量に逆効果…最新データでわかった“ダイエットをすると太る”明確な理由

『ダイエットをしたら太ります。 最新医学データが示す不都合な真実』より #1

2021/07/30
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 このことからわかるのは、女子学生では、ごく一部の太っている人だけがダイエットや不健康な体重コントロールを繰り返していたわけではない、ということです。

 また、“体重など気にせずガツガツと食べる”イメージの中高生男子でも、1~2割もの人が、ダイエットや不健康な体重コントロールを繰り返していたのです。

 ただし、ダイエットをした人たちと不健康な体重コントロールをした人たちは、まったく別の集団ではありません。「不健康な体重コントロール」にも「絶食、ほんの少ししか食べない、食事を抜かす」という食べ方を変える項目が含まれていますから、これらの項目を行った人は、ダイエットと不健康な体重コントロールの両方に該当します。あるいは、それ以外の食べ方を変える方法、たとえば「炭水化物を摂らない」「野菜を先に食べて、肉や炭水化物はその後で食べる」などのダイエットと、不健康な体重コントロールに当てはまる項目、たとえば「食事を抜かす」「より多く喫煙する」などの両方を行っていた人もいるでしょう。ちなみに、不健康な体重コントロールの中で最も一般的なのは、男女ともに「ほんの少ししか食べない」と「食事を抜かす」だったそうです。

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 要するに、ダイエット群の人たちと不健康な体重コントロール群の人たちは、かなりの程度重複しているわけです。そして、より過激な行動である「不健康な体重コントロール」を繰り返した人の方が多いという事実は、ダイエットがしだいにエスカレートすることを物語っていると考えられます。

ダイエットをするとBMIが上昇した

 しかし、本当の驚きは、そのことではありません。なんと、ダイエットを繰り返していた人は、男女ともに、ダイエットをしなかった人に比べて、調査終了時のBMIが著しく上昇していたのです。

〈女子学生のBMI上昇値〉

  ダイエットなし 2.38 ダイエット継続 4.33

  不健康な体重コントロールなし 2.29 不健康な体重コントロール継続 4.63

〈男子学生のBMI上昇値〉

  ダイエットなし 3.45 ダイエット継続 6.96

  不健康な体重コントロールなし 3.65 不健康な体重コントロール継続 5.42

※研究開始時点でのBMI、年齢、社会経済的状況、人種を統計学的に補正した値

 BMI(Body Mass Index=体格指数)とは、国際的に用いられている、肥満度を表す指数で、以下の式で求められます。

BMI=体重(㎏)÷身長(m)÷身長(m)

 詳細は次項で述べますが、日本ではBMI18.5未満が低体重(やせ)、25以上が肥満と判定されます。これを体重に換算すると、たとえば身長160センチ(1.6メートル)の人は、47.36キロ未満が低体重、64キロ以上が肥満です。

 BMIから体重を出す場合は、「身長(m)×身長(m)×BMI=体重」です。

 先のBMI上昇値を、160センチ50キロのAさん(女性)に、当てはめてみましょう。AさんのBMIは「50÷1.6÷1.6」で19.5です。

 Aさんが、ダイエットを繰り返した場合。10年後には、BMIが19.5から4.33上がって23.8になります。これを体重に換算すると「1.6×1.6×23.8」で60.9キロ。実に10キロ以上も増えてしまうのです。

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 Aさんがダイエットをしなければ、10年後のBMIは2.38上がって21.9。体重は56.1キロですから、その差は約5キロ。何もしない方が、ダイエットするよりもずっといいのです。

 では、もしもAさんが不健康な体重コントロールを繰り返したとすると? BMIは4.63上がって24.1、体重は61.7キロです。食べ方を変えるダイエットをした場合よりも、さらに体重が増えてしまうわけです。