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それは本当に「なりたい自分」なのか、立ち止まって考えて

 では、どうすればいいのでしょうか?

 まず、自己実現に疑問を持つことです。真面目な人ほど内面化した価値観に忠実で、その価値観に基づいて自己実現しようと、一生懸命努力してしまいがちです。つい、負けず嫌いを発揮してしまうのです。そうした努力や競争を、ちょっと脇に置いて冷静になってみてください。そして、なりたい自分は、本当に自分のなりたい自分なのかを、改めて考えてみてください。

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 ダイエットしてやせることは、本当に自分のなりたい自分なのでしょうか? フィジーの少女たちは、テレビが来る前は、誰もやせたいとは思っていませんでした。やせたキャビンアテンダントが活躍するテレビ番組を見て、「キャビンアテンダントになるには、やせなければいけない」と思い込んでしまったのですが、やせていなければキャビンアテンダントになれないわけでも、やせていればなれるわけでもありません。摂食障害の患者さんは、元はと言えば「生きづらさをなんとかしたい」と、思っていたはずです。あなたは、どうでしょうか。どうして「やせよう」と思ったのでしょうか。

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 摂食障害の治療では、患者さんが生きづらさの中を生き抜いてきたことを発見・確認し、そうした自分をほめてよいこと、生きていく力があることを伝えた上で、やせることへの執着を捨て去ることを話し合います。どのような生きづらさを抱えているかを治療者が見いだし、その生きづらさを解決する方法があること、やせることは何の解決にもなってこなかったことを振り返ります。すると、ほとんどの患者さんは驚き、戸惑いながらも、やせることへの執着の虚しさに気づいていきます。

 私たちがダイエットの呪縛から逃れる方法も、実は同じです。競争や自己実現とは全く異なる視点を見いだせばいいのです。

 みんなやっているからと、流されて競争ばかりしていては幸せになれません。立ち止まって考えることの方が大切ですし、それができた時、真に穏やかで心豊かな毎日が手に入ると私は思うのです。

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