遺言ビデオ:地獄への誘い
2010年6月24日、2ちゃんねるオカルト板に立てられた「死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない? 243」スレッドにて、あるビデオメッセージに纏わる話が書き込まれた。
フリークライミングを趣味としていた会社員のKがクライミング中の滑落事故により死亡する。
この会社員と家族ぐるみで仲良くしていた同僚の男性は、彼に頼まれてその半年前に撮っていた、家族へ向けたビデオメッセージを遺族に見せることにした。
そのビデオは男性の家で撮られており、白い壁を背景にして、Kが残された家族への謝罪と励ましの言葉を語る様子が映っているはずだった。
映像の異変
しかし実際はDVDを再生した瞬間に異変が起こり、ヴーという奇妙な音が響くとともに10秒ほどの間真っ暗な画面が映り続けた。
その後、黒い画面の中にKが映り、話し始めた。彼は初めは家族への感謝の言葉を語っていたが、ところどころ雑音に搔き消される。
そして言葉が自身の父や母、そして友人へのメッセージに至ったところで断末魔のような声を上げ始めた。「僕を育ててくれたお父さん、お母さん、それに友人のみんな、僕が死んで悲しんでるかもしれませんが、どうか悲しまないでください。僕はズヴァアアアアアアアアアア(娘の名前)、お父さん死んじゃっヴァアアアアアアアアア死にたくない! 死にズヴァアアアアアアアにたくないよおおおおヴヴァアアアアアアアアア、ザッ」
映像の最後には暗闇の端から何かがKの腕を摑んで引っ張って行く様子が映されていた。
それからDVDは男性の手によって除霊のため、ある霊媒師の下に持って行かれたが、Kはビデオを撮った時点で完全に地獄に引っ張り込まれており、何で半年永らえたのか分からない、本来ならあの直後に事故にあって死んでいたはずだと言われたという。
地獄へと連れ去られる
人間が生きたまま地獄に連れて行かれるという話は古くからある。例えば鎌倉時代の説話集『古事談』には、平安時代の武将である源義家が病に倒れた際、その向かいに住む女性が夢の中で地獄絵に描かれるような鬼たちが義家の家に乱入し、義家を捕らえて「無間地獄の罪人、源義家」と書かれた札を置いて出て行った光景を見た。その夢から目覚めた朝、義家の死の報せが届いたという。
また人を地獄に連れ去る妖怪に火車というものがいる。基本的には死体を奪う妖怪だが、江戸時代の説話集『新著聞集(しんちょもんじゅう)』には火車が生前の老婆を連れ去った話が載せられている。この老婆は生前ケチで人々に嫌われていたという。
このように地獄へ引っ張られる話はあるが、基本的に地獄に行くのは殺生を始めとする何かしらの悪事を働いた人間である。仏教ではよほどの悪人でない限りは死後の裁判も経ずに地獄に落とされることはめったにないとされているため、安心してほしい。