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《“怪異”の世界》「僕はズヴァアアア…」生きたまま地獄に引っ張り込まれた男が残したDVDに映っていたものとは

『21世紀日本怪異ガイド100』より #1

2021/08/08
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黒長さん:令和に生まれた呼び出す悪霊

 時代は令和を迎えた2019年の10月3日、この怪異は電子掲示板2ちゃんねる(2ch.sc)の「死ぬほど洒落にならない怖い話を集めてみない? 356」スレッドに書き込まれた。

 それによれば、黒長さんは「こっくりさん」や「さとるくん」のような遊びで、成功するとなんでも願いが叶うものだと言われていた。

 その方法は次のようなものだった。

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 まず塩水を用意し、部屋の全ての扉と窓に鍵をかける。そして携帯またはパソコンのホーム画面を黒の単色に設定する。次に掲示板かSNSに「黒長さん黒長さん、お待ちしております」と書き込む。その後、同じく黒長さんをやっている相手が「黒長さん黒長さん、○○(呼ぶ側)くんが呼んでいます」と書き込む。1時間待った後、30分以内にもう一人に「黒長さん黒長さん、ありがとうございました」と書き込んでもらう。最後に書き込みを確認したら、すぐに塩水を飲み干す。

ルールを破った者は

 ただし、いくつか注意点があり、終了するまでは決して黒一色にしたホーム画面を覗いてはならない、終了するまでは決して部屋を出てはならない、儀式の途中で抜けてはならないという。

 この儀式の途中で誤ってホーム画面を見てしまうと、背中に冷たい、ムカデが這い回っているような感触がする上、何者かが鍵をかけた扉を叩き、ドアノブを激しく回すなどの現象が起きる。これは数日間続き、この現象に遭遇した者は身動きが取れなくなってしまうと語られている。

霊を呼び出す儀式

 この怪談では「こっくりさん」や「さとるくん」に似た遊び、と語られており、「黒長さん黒長さん、お待ちしております」などの文言は「こっくりさん、こっくりさん、おいでください」や「さとるくん、さとるくん、おいでください」といった、こっくりさんやさとるくんを呼び出す際の文言に類似している。また儀式の途中で余計なことをすると害が及ぶ、という話もこっくりさん、さとるくんに見られる要素だ。

 一方、こっくりさんやさとるくんは呼び出したところで願いを叶えるのではなく、どんな質問にも答えてくれるとされる存在であるため、黒長さんとは明確に異なる。またこっくりさんはその場で、さとるくんは公衆電話から自分の携帯電話に電話をかけることで対象の霊を呼び出すが、黒長さんは電子掲示板やSNSなど、インターネットを経由した呼び出し方になっている。

©️iStock.com

 この本でも紹介している「幽霊だけど何か質問ある?」など、幽霊がネット上に現れたり、電子機器に出現する例は案外多い。黒長さんも電子の海にいる様々な霊に居場所を知らせ、呼び寄せる儀式として想定されているのかもしれない。

【続きを読む】“きさらぎ駅”や“八尺様”を生み出した「洒落怖」スレッドブームは過去のもの!? ネット発の“怖い話”が生まれにくくなった意外なワケ

21世紀日本怪異ガイド100 (星海社 e-SHINSHO)

朝里樹 ,裏逆どら

講談社

2021年7月26日 発売

《“怪異”の世界》「僕はズヴァアアア…」生きたまま地獄に引っ張り込まれた男が残したDVDに映っていたものとは

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