空き家の獣:閉じられた部屋にいたもの
2011年8月3日、2ちゃんねるのオカルト板に立てられたスレッド「死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない? 275」にて、ある人物により少年時代の体験談として書き込まれた。その概要は以下のようなものだ。
その当時、彼らの間では探検ごっこが流行っており、林や廃墟、用水路など、家の近所にある様々な場所を子どもたちで探索していたという。
そんな中、少年たちは一軒の空き家を探検することに決め、ある休日の昼、他の子どもたちが穴を開けた勝手口から屋内に侵入した。
室内は埃が積もっているものの、誰かに荒らされた様子もなく、置き捨てられた家具や段ボールが並べられていたという。
少年たちは懐中電灯を頼りに中を探していたが、良いものは見つからない。しかし一人が本棚に隠れた引き戸を見つけ、彼らはその戸の向こうを覗くこととした。
謎の獣
そこには四畳ほどの和室があったが、懐中電灯が照らした先に奇妙なものがいた。
それは小学生の人間より体が小さく、その割に頭が大きかったという。その目は異常に発達しているが、鼻と口は小さい。また汚いTシャツを着ており、ズボンは穿いていない。全身に赤ん坊の産毛のようなうっすらとした体毛が生えており、指は四本で、異常に生臭い匂いを発していた。
この奇妙な獣たちは突然当てられた懐中電灯の光に苦しむ様子を見せ、鳥のような声で喚いていたという。また一匹は目を搔きむしり、膿のような液体を垂らしていたという。
少年たちは慌てて逃げ出し、本棚を戻してバリケードにしてこの獣たちを閉じ込め、そのまま空き家を出た。
少年たちはその空き家には二度と近付かなかったが、別の子どもたちがこの空き家を訪れた時にはその獣はもうすでにいなくなっていたと語られている。
また、現在この空き家は取り壊され、ラーメン屋になっているという。
獣たちの正体は
ここに出てくる獣はまるでJ・R・R・トールキンの小説『指輪物語』に登場するゴクリ(ゴラム)を連想させる。
光に弱いにもかかわらず目が発達しており、日の当たらない場所に住むというのもゴクリと同じだが、このゴクリは元来ホビットという小さな種族であり、それが指輪の魔力によって寿命を超える年月を生き、姿形も変わってしまったと物語の中で記されている。
そしてこの獣たちもまたTシャツを着ている、空き家に棲み付いている、といった特徴が語られていることから、元々は人間だったのではないかという想像もできる。
獣たちのいる部屋が本棚で閉ざされていたのは、怪物を閉じ込めるためだったのか、それとも閉じ込められた人間がいつしか怪物になってしまったのか……