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──会社の元同僚たちが現在の緑川さんを知ったら、だいぶ驚かれるでしょうね。

緑川 たぶん、「嘘だろ!」って思っているんじゃないでしょうか。ちょうどその会社で働いている時に、姉夫婦に誘われ、初めて東京拘置所の矯正展に行ったんです。

 

〈全国矯正展は、法務省が主唱する「社会を明るくする運動」の中央行事の一環として、受刑者が作った作業製品を刑務所や拘置所などで展示即売するイベント〉

──行ってみてどんな感想を持たれましたか?

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緑川 ものすごく楽しくて! お祭りみたい。行く前はアングラなイメージを抱いていたんですが、実際に足を運んでみたら、地域のご家族とかお子さんがたくさん来場していて、キッチンカーで色々な食べ物が出ていました。そこで「プリズン弁当」を食べたんです。塀の中の食事を再現したメニューで、受刑者気分を味わうことができました。

──プリズン弁当の中には何が入っていましたか?

緑川 その時は麦飯と野菜炒めみたいなのと、魚の切り身、あとはお漬け物もあったかな。それが大人気で完売しました。姉は食べなかったので、私1人で食べました。普通に美味しかったです。

 

監獄で育てられた牛が、巡りめぐって私の胃の中に入って行く

──刑務所の食事は俗に「クサイ飯」って言われますが、そういう印象とは異なりますか?

緑川 全然違いました! ヘルシーですし、これで十分じゃんっていう感じでした。そのほか、「網走監獄牛」のコロッケも食べました。普通のコロッケかなと思っていたら、「受刑者が丹精込めて育てた牛のコロッケです」といううたい文句が添えられていて、激アツだ!と。監獄で育てられた牛が、巡りめぐって私の胃の中に入って行く感じが、一種の興奮じゃないですけど、衝撃だったんです。それもとても美味しかったです。

〈北海道の網走刑務所から約6キロ離れた二見ヶ岡農場では、寮に住む込む受刑者たちによってA5ランクの和牛が育てられ、市場に出回っている〉

──矯正展でお土産は何か買いましたか?

緑川 刑務所作業製品も売っていましたので、「マル獄」のポーチを買いました。しかも並ぶほどの人気ぶりで。茶色と青色の2色あったのですが、茶色は売り切れていたので青色を買いました。あとは便箋も買いました。

「マル獄」のポーチを手にする緑川さん

〈「マル獄」とは、「獄」のロゴがプリントされた前掛けや巾着袋などの「マル獄シリーズ」製品のことで、函館少年刑務所で製作されている〉

 矯正展で一緒にいた姉からは「麻原彰晃が今、中に入っているんだよ」と言われ、「おおおっ!」とまたも興奮してしまいました。ニュースで報道される人物の収容現場の側に自分がいて、こっちはお祭り気分ですけど、塀の中はまた別世界っていうのが不思議な感じがして。それで中に少しでも入ってみたくて、東京拘置所のトイレを借りてみました!

──矯正展で味わった楽しさとトイレの実体験も踏まえ、そこからは自分で刑務所の世界を開拓されたのでしょうか?

緑川 やっぱりムショ飯に興味がありすぎて、他に食べられるところはないか探してみたんです。そしたら網走監獄という博物館の「監獄食堂」で、再現した食事が食べられるっていうんですよ! でも、私の趣味にあまり付き合ってくれる人がいなくて……。母だったらいいだろうと、母と2人で行きました。監獄食AとBに分かれていて、魚の種類が違っていたので、母と交換し合いながら食べました。