目からの無意識のSOS
だからこそ、もし「自分にぴったりのメガネ」を手に入れることができれば、これらの症状は劇的に改善する可能性がある。実際、原因が「メガネのせいだ」とは気づかず、過酷な人生を歩んでいる人が、じつはたくさん存在しているのだ。
ちなみに、最後の項目「大きな文字を書くようになった」は少し不思議な項目のように感じられるかもしれない。しかし、「自分に合わないメガネ」をかけた患者に、本からノートへと小さな文字を長時間書き写してもらう実験を行うと、実際、後半になるにつれて徐々に文字が大きくなった。
小さな文字を見るには、目を近づける必要があるが、大きな文字であれば、目を離しても読むことができる。目からのSOSによって、無意識のうちに文字が大きくなるのだろう。自分で最近書いたノートやメモが手元にあれば、一度点検してもいいかもしれない。
「メガネで人生が変わる」は誇張ではない
私がテレビディレクターとして、初めて「ガッテン!」(かつての「ためしてガッテン」)を担当した際のテーマは「メガネ」だった。その時、眼科専門医を中心に何人かの専門家に取材をしたのだが、全員から必ず耳にしたのが次のような言葉だった。
「メガネのことなら、梶田さんに話を聞いてみたほうがいいよ」
日本眼光学学会理事を務めた梶田雅義さんは、これまで4万人以上の目を診察してきた、目とメガネ(コンタクトレンズ)のエキスパートだ。そんな梶田さんが最初の取材で話してくれた内容が印象に残っている。
「メガネで、本当に人生が変わる方がいらっしゃるんです。新しいメガネを試してもらうと、患者さんが『あっ!』と驚くんですよ。それが楽しくてやっているようなものです」
「メガネで人生が変わる」とは、どういうことか。都内の梶田さんの診療所で改めて取材をさせてもらうことにした。最初に驚かされたのは、本当に多種多様な目の悩みを持った患者が、全国からやってきていることだ。一例を見ていただこう。
「痛い、とかではなく、すごい違和感があるんです。『重い』が一番近いんですけど、(正確には)重いとも違うんですよね。目が開かないというか……」(30代女性)
「目がぎゅっと握りつぶされるような(感覚があります)。頭痛もひどいです。眠ってもとれません」(40代男性)