それらの身勝手な言葉の羅列に加えて、ヤミ金の過酷な取り立てがあり、ストレスや睡眠不足などで精神的に追い詰められ、〈ものごとの良し悪しの判断が出来ない状況下にあったのだと思います〉と結論づけているのである。
最愛の家族を奪われたうえに、これほどまでに空疎(くうそ)な文章を突きつけられた遺族の心情を思うと、ただひたすらやりきれなさが募る。
「やっぱ性欲が理由よ」
鈴木の逮捕から10年が経つ。私は直方市の歓楽街を訪ねた。鈴木は殺人に手を染めた後も変わらずこの街のスナックに出没しては、歌い、笑い、猥談(わいだん)を口にし、ときには気分を害して店のママにとりなされるということを繰り返していた。
じつは鈴木の印象について、どの店でも「内向的で、自分から知らない客に話しかけたりすることはありえない」との言葉を耳にした。ただ時折、女がらみのことで“キレる”姿は目撃されている。鈴木と10年以上前から飲んでいた知人は言う。
「気に入った女の子がいる店に通っては、おみやげを持って来たり、フルーツ盛りを頼んだりと、いつも大盤振る舞いをしよったね。一度、ご執心の女の子に持ってきた焼き鳥を別の客が食べたことがあって、そんときは口にこそ出さんかったけど、いっぺんに機嫌が悪うなって、明らかに苛々した態度を見せとった」
彼を20代のころから知っているスナックのママは、同店での行動について振り返った。
「ちょうど事件の最中、他のスナックの女の子が3回くらい昼ご飯に誘われよったと。断ったらしいけど、もし行ってたら殺されとったかもって話が出てた。鈴木はうちの店には、いつも2時頃のラストまでおったよ。女の子目当てで通いよったこともあって、たしかその子に一度キレたこともあるんよ。『俺がこいだけカネを遣っとるとに、なんかその態度は?』って怒鳴りよった」
このママによれば、鈴木は店ではいつも猥談を口にし、性欲の強い印象があったという。