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《福岡3女性強盗殺人事件》反省も謝罪もない鈴木泰徳の“逆ギレ”「奥さんがさせてくれん」「これで駄目なら、どんな態度をすればいいのですか?」

『連続殺人犯』より#14

2021/09/27

source : 文春文庫

genre : ライフ, 読書, 社会

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一貫して殺意を否認し続けた

 そこで鈴木は2月2日から、逮捕前日の3月7日まで働いていた。

「あの日(3月8日)、仕事に出て来んから、携帯や自宅に電話を入れたんです。ただ、電話に出た奥さんによれば、昨日から帰ってないということだったんで、じきに連絡があるだろうと思ってました。そうしたら夕方のニュースで捕まったと出て、もう、びっくりしたんです。あとで従業員に聞いたら、仕事ぶりはまじめだったそうですし、とくに怪しいこともなかったようです」

「その犯行は非常に凶悪、かつ残虐である」

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 06年11月13日に福岡地裁で開かれた判決公判。裁判長はその言葉に続き、鈴木に死刑判決を言い渡した。一連の公判における彼の弁明について、裁判長は「不自然」であると切り捨て、反省が皆無であると指弾した。時折涙を浮かべ、うなだれるようにして判決理由を聞いていた鈴木は、退廷前に傍聴席に向かって頭を下げ、小さな声で「申し訳ありませんでした」と口にした。

 その後も控訴審、上告審と裁判は続けられたが、鈴木は一貫して殺意を否認し続けた。だが、いずれも訴えは棄却され、逮捕から6年の時を経た11年3月に死刑が確定した。

 現在彼は、福岡拘置所で刑の執行を待つ身である。もちろん、再審請求を出し続けている可能性もあるが、現在どのような状況にあるかという情報は得られなかった。

 15年3月上旬、私はレンタカーで長崎県某市へと向かった。原稿を書く前にご挨拶に伺いたいとの申し出に、奈美さん(仮名)の父・高志さん(仮名)が応じてくれたのだ。事件後に県内の離島を出た高志さんは、現在は某市内で民宿を経営している。仕事の合間の短時間であれば、との条件での承諾だった。

 目的地に着き、玄関を開けて声をかけると、「はーい」と声が聞こえ、がっしりした体型の高志さんが現れた。私は挨拶をして居間に上げてもらうと、奈美さんの写真が飾られている棚に手を合わせ、瞑目(めいもく)した。

 以前は島で役所に勤めていた高志さんは、奈美さんの事件が起きたあとの市町村合併によって、単身赴任で現在の町にやってきたという。

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