「劇団ひとり」の話題に埋もれてしまったPV
――なかなか崖っぷちな状況ですね。
紘毅 実際、2枚目のシングルも結果が出ていないので「じゃあ、わかりました」と。ただ、当時の僕としては親父に相談したり、お願いするのはイヤだったので、会社の方から話をしてもらって。そうしたら、親父は「じゃあ、PVに顔半分だけ出てやる」と(笑)。本当に顔半分だけ出てくれているんですよ。
朝の情報番組とかワイドショーで扱ってもらうことになったので、朝4時からテレビの前で待機ですよ。PVが流れて「やった! 話題になるかも」と思ったら、劇団ひとりさんと大沢あかねさんの結婚のニュースが速報で入って。どの番組もそのニュース一色になって、僕のPVは段々と扱いが小さくなって遂にゼロみたいな。
それを見ていた親父から「ほら、おまえは運もないんだよ」「この切り札を使って、それすらも話題にならなかったんだから、無理ってことなんだよ」って言われて、メチャクチャへこみましたね。おめでたいニュースなので、それは別として。
――それは応えますね。
紘毅 良くも悪くもなにかしら反応があったらと思っていたけど、なにも返ってこずに終わったので。
森山直太朗さんのスタンスが理想だったんですよ。直太朗さんは成城学園の先輩で、僕は大ファンなんですけど。直太朗さんは「あの『さくら』を歌ってる森山直太朗って、実は森山良子の息子らしいぜ」みたいな感じで広まっていったじゃないですか。僕もそうなりたかった。まずは歌と僕自身、そこから「あの紘毅って、実はさ……」という。
そうならずに親父の名前を先に出すのは情けなかったし、会社に対してそれを突っぱねることができるものが僕には一個もなかった。自分の実力のなさを痛感したし、プライドもへし折られましたね。
「2世タレント」としてバラエティに出演
――その後、「2世タレント」としてバラエティに出演もするようになります。お父様のスタンスは?
紘毅 そのときどきで変わるんですよね。『踊る踊る踊る!!さんま御殿‼︎」収録前日に「おまえ、こんなのばっかりやることになるぞ」「番組が始まったら、すぐに親父のことで話せることはなにもありませんって言えよ」と言われて揉めたこともあります。
それじゃ番組にならないじゃないですか(笑)。「無理だよ」「じゃあ、出るな」なんてやり取りを延々とやって、最後は喧嘩になって。
でも、いざ収録直前になったら「おまえ、あの時の話だったらいいんじゃないか」ってめっちゃ提案してくる(笑)。