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 このとき処分された力士たちは、八百長を自ら認めていたわけではなく、なかには蒼国来(現・荒汐親方)のように法廷闘争で「潔白」を証明し角界に復帰したケースもある。大相撲の八百長を禁じる法律はないため、相撲協会は独自の判断で引退を迫ったわけだが、ここで重要なことは疑われた当事者が否定したとしても、決定的な証拠を重視し「角界追放」を実行したことである。

 この一件で、相撲協会は2011年の3月場所を中止。5月場所を「技量審査場所」として興行としての本場所とは区別し、観客を入れたものの入場料は徴収せず、NHKによる中継も実施しなかった。

大相撲の「八百長メール」事件で記者会見する放駒理事長(元大関魁傑、当時)。メールに登場した力士のほとんどは引退勧告を受け実質的に解雇された

 いずれも「八百長事件で失墜した信頼の回復がなければ通常の本場所を開催することはできない」との考えに基づくものである。

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競走会の根深い隠蔽体質

 ひるがえって、競艇の場合はどうか。西川が証言するように、艇界には他にも八百長選手がいる。少なくともそれを示す決定的なLINEのやりとりがある以上、競走会は不正が疑われる選手の出場を停止させたうえで、疑惑を第三者に調査検証させ、西川本人にも弁護士経由で他の八百長選手を聞き取り、その結果をファンに向け公表するべきだろう。競艇の監督官庁である国交省も、それを指示しなければならない。

 この問題にかかわらず、競走会の隠蔽体質は相当根深い。2021年にはコロナ給付金の不正受給が発覚、4月の段階で215名もの選手が不適切な給付金受給に走っていたことが発覚したが、その後、8月になって10名の選手が新たに不正受給したことが判明している。

コロナ持続化給付金の不適切な受給で選手200名以上が処分された ※画像はイメージです

「全選手を調査して215人」だったはずが、その後なぜ10人増えたのか。当初の調査に虚偽回答していたならば悪質な「処分逃れ」も疑われる状況だが、選手の実名や、褒章懲戒審議会にかけて処分した結果も発表されない。全競艇選手1574人のうち200人以上が不正受給というのも驚きだが、競走会内部では「他の公営競技でも不正受給があったが、最も厳しい処分をしたのでウチはむしろ健全」(競走会幹部)なる認識だというから、どこかおかしい。